カナアンの至高神。
「神々の父」、「人類の父」、「雄牛」、「創造主」と称される。
すでに老い、判断力を乏しくさせているとされる。大酒飲みでもあり、宴会ではひどい酔態を見せたらしい。
Lel 山に住んでいる。
彼は老いて、妻アシラト Asherah をも疎遠に扱うようになった。そこでアシラトは嵐の神(バールか?)を不倫に誘うが、断られた上にこの不義密通の企てを夫に密告されてしまう。夫のイルはこれを聞くと、事もあろうに嵐の神に対して妻と同衾した上で辱めるように勧める。嵐の神はその通りに行動してアシラトを怒らせたのであった。
あるとき、月の神ヤリフ Yarikh とアシラトの侍女たちが嵐の神バール・ハダド Baal Hadad の創造物に貪り食われた。ヤリフとアシラトは侍女たちをエルの下へ逃した。エルはこのバール・ハダドを狩り出すに当たり、侍女たちに荒野に行ってこれをおびき出させる獣を生み出すよう助言した。彼らはその通りにし、そこで角のあるこぶ牛を生んだ。バール・ハダドはこぶ牛を狩るのに夢中だったが、沼地で突き刺された。7年後、バール・ハダドの親族はようやく彼を救った。
エルはビブロスでのみ主神として崇められている。
エルは通常、灰色の髪と髭を持つ老人の姿で描かれる。