東方の神話
Mythoes Kralororum
 
原初の大竜(創造以前)
この世の始まる以前、古き世界にはただ畏るべく尊ぶべき原初の大竜のみがあった。言葉に語り難い様々な思いの末に、大竜は悟った。多くの者と倶にあることは、独であることに優ると。それ故、大竜は玉体を幾つにも分かった。大竜の息吹きよりは劫初の大冥が、骨よりは劫初の山が、鱗と髪よりは禽獣と草木が、魂魄よりは至聖の精霊、すなわちエーテルが生まれた。
世界の創造(世界の創造)
劫初の大冥は過たず自らを多くの冥と、海と、湖と、天上の水気とに分かった。劫初の山は分かれて山脈と丘とになった。禽獣と草木とは大竜の変成してなった天地の内に、心のままに殖えていった。エーテルは本然の至聖の性より、天空の諸神を創り成した。
神聖な先祖たる野人の末裔(人間の創造)
大竜の玄妙の心臓からは野人が生まれた。はじめ、野人は天地の理法を知らず、世をさ迷っては数々の雑婚を為した。彼が石と交わるとドワーフが生じ、草木と交わるとエルフが生じ、様々な獣と交わるとスンチェンが生じ、海の怪物と交わると魚人が生じた。こうして生まれた生物が知恵ある四百の聖族である。
しかし大地の女帝はついに孤独のまま途方に暮れる野人を哀れみ、しかるべき妻、慈悲の女人を与えた。彼女は野人を馴らし、彼らは交わり、はじめて真の人間を子に持つことができた。野人と慈悲の女人との間に生まれた“賢者”アプタイネスは1,400人の子供を儲けた。そのうち700人の息子がそれぞれの文明の700の技を始め、700人の娘はそれぞれに700人の兄弟と結ばれて、それら700の技を実生活の上に適用する役を担った。
啓蒙の光(黄金の時代)
メトゥサイラはイェルムによって魂の在りようを他に教えるため創られた。このゆったりと膨らみを持った長衣を纏い、袂から17本の赤いリボンを垂らした、完全な球体は、自分の創られた場所を決して離れず、そこからクラロレラ全土に影響を及ぼしている。
イェルムの死(嵐の時代)
至聖の秩序を覆そうと計った反逆の神々は、荒野を統べ、蛮夷を率いる“反逆者”オーランスを頂いて、世に戎馬兵甲を引き起こし、イェルムの黄金の時代に終わりをもたらした。
クラロレラ帝国の建国(嵐の時代)
イェルムが殺害され彼の宇宙帝国が崩壊したとき、慈悲深い竜帝の家系が支配を引き継いだ。
人にして初めてクラロレラの皇帝となったのは、シャヴァイアである。それ以前の支配者は皆、哲学的な存在か、宇宙の力を身に受けた半身であった。かれは永遠に行き続けるべきクラロレラ流の生き方を定めた。
シャヴァイアとデンダーラの娘は彼女の民人に、その文化、料理、そして米の崇拝といったことについて、あらゆる必要なことを教えた。彼女、穀母の贈り物は、卑しき農夫の上にも及び、恵みは荒れ汚れ果てた地の上にも至っている。穀母なき四囲の蛮夷どもは、飼い葉のごときものを食って命をつないでいるというのに。
ダルーダ帝は、東方の地にドラゴン魔術をもたらし、また己の魂をドラゴンの魂に等しいものにする術を、後を継ぐ皇帝たちに伝えた。
サラーズニー帝は、クラロレラの死後の世界を創り上げた。死者の霊とまだ生きている者とを分かつ責任を負った神ラーンステイは、死者の霊を彼の管理に委ねた。民人の魂は彼の地に行き、そこで竜帝の死を待つ。竜帝の死とともにこれらの魂は、帝につき従って、より善き世界へと旅立つのである。またサラーズニーは敵対する精霊たちを打ち負かし、クラロレラの領土を大きく広げた。彼の打ち破った敵のうち、もっとも強大なものを挙げるならば、影なる癌、大地を喰らうもの、星を操るもの、神秘の水などである。これらは忘却王国へと追い払われた。
ミカデイ帝は変装してクラロレラの人々の生活を見聞して歩いたことで知られる。世に立法の制及び官吏の制を打ち立てた皇帝である。
誘惑の時(嵐の時代)
光輝王国の永遠の真理が、忘却王国と山の獣たちによって脅かされた。気高い皇帝がこの魂の苦悩の時代に民を率いていた。しかし、敵の前に屈伏していくものもまた多かった。
宇宙山の倒壊(大暗黒)
世界の中心には天宮を覆うアダマントによって作られた巨大な山があった。宇宙山は震え、爆発し、蒸発し、大激変が起こって消え去った。そして再び世界中が残酷なまでに清められた。
混沌の侵略(大暗黒)
反逆の神々は一つの存在をこの天地間に解き放った…。その力はあまりに大きく、彼らには到底手綱を執ることのできぬほどの、一つの存在を。多くの神々が彼の者と戦った。そして幸いなるかな、クラロレラのみは知恵と大いなる犠牲によって、古き世界を再び地上に現出することができた。
偽りの竜たちと悶える死者(帝国の時代)
太陽暦768年、異国の悪魔が海の彼方から来て、クラロレラの地に浸透し、堕落をもたらし、内的到達への道教団を利用して、不当に権力を奪うために竜帝聖ヤノールを廃した。彼は暗殺者から逃れるため、不完全なまま来世に旅立った。それ以来、真の知恵の代わりに無知と悪弊が地を支配した。何百万もの農民が竜帝の後を追ったが、太守や司祭たちは殉死する時期を逸し、北の忘却王国へ逃れた。
正しい支配者は権力を奪われた。そのため東方の死者は死んで解放される代わりに、不幸な魂たちを集めて淀みをつくった。魂は溢れ出し、生の世界に取り憑いた。
彼らは新竜環という五人制の組織を作ってクラロレラ支配に乗り出した。彼らは支配体制強化のために偽の竜帝シャン・シャを祭り上げる一方、この地の魔術・儀式の徹底解剖を始めた。
しかし、太陽暦1051年、偽の竜帝と新竜環の支配下にあったクラロレラを、ドラゴンの覚醒が襲い、スアム・チョウの島嶼が沈降し始めた。それとともに人民は神知者への反乱を開始し、太陽暦1120年、新竜環の支配は打ち倒された。
竜帝ゴドゥーニア(最近の数世紀)
太陽暦1124年、現在の竜帝ゴドゥーニアが即位し、クラロレラ帝国は再び真の竜帝の下に統一された。ゴドゥーニアは北方の忘却王国を自治領として帝国に組み入れ、また本土とフム・チャンを結ぶ七大橋を建設した。クラロレラ人にとっての橋は、万物の繋がりの象徴であり、竜帝の下に帰依する人々に与えられる力の具現でもある。クラロレラの民がゴドゥーニアの七大橋を渡る、あるいは船でその下を行き交うとき、彼らはここの橋が示す道徳を再び心に焼き付けるのである。
ゴドゥーニアの肌はここ160年に渡って金色を深めてきており、ために今では黄金の彫像のように見える。これは大いなる啓蒙のときが近づきつつあることを示すものである。
海の大解放(最近の数世紀)
近年、異国の船が久方ぶりに帝国沿岸に姿を現し始めた。外国の干渉を嫌う竜帝は、太陽暦1587年、艦隊を派遣して彼らを打ち破った。この海戦で生き残った敵の七人の水夫を、それぞれ片目を潰した上で、メッセージとともに彼らの故郷へ小舟で送り返した。

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