ルナーの神話
Mythoes Lunarorum
昇月に栄えあれ!
育み手と造り手(創造以前)
二柱の創造の神がそれぞれ世界を創ろうと試みた。造り手は宇宙の未加工の原料を取り、それらを目的ある構造へ整えた。彼は自然の法則を定め、スパイクを建造した。育み手は世界を造るための未加工の原料を取り、それを掻き立てて生命へと育て上げた。そして、造り手との性交を経て、この世界の最初の生命であるグローランサが生まれた。二柱の神は繰り返される過ちに苛立ち、努力を結集して、最後には完全な成功を達成した。
創造主(世界の創造)
創造主が世界を創り、世の万物を創った。万物のうちで最初に創られたのは、二色の神々であった。天宮の神々と、混沌の族である。創造主は仕事を終えると、彼方へ去ってしまった。
天宮の神々(世界の創造)
女神グローランサは八つの力、すなわちユーレーリア(生命)とカーガン・トール(闘争),エイコース(法)とラツラフ(無秩序),オレノア(真実)とタイレーニア(幻影),ハラーナ・イロール(調和)とラーンステイ(変化)を生み出した。これらの力は天宮に集いエネルギーを創った。彼女は五つのエレメント、すなわち暗黒の貴婦人(闇),海の父(水),大地の女帝(地),光の王(火),ウーマス(風)も順に生み出し、これらのエレメントによって物質を創った。既知の世界は、これら最初の神格が相互作用して発展したのである。
最初の女性(人間の創造)
天宮の神々と混沌の族は、互いに破滅をもたらそうとして相争った。神々の倒れた後には、灰燼と金属の残滓が残るのであった。哀れみ深い女神グローランサは、こうした物質から、この世で最初の女性を創った。彼女は、石とも、泥とも、樹とも、獣とも、そして人に近い半神とも交わって、人間族の遠祖を生んだ。人間族はこの世に健康に、そして夥しく殖えていった。
神聖な平和と宇宙的調和の時代(黄金の時代)
太陽神イェルムは、全宇宙の皇帝として、この世界を情け深さと完璧の調和のもとに治めていた。すべての者は彼の法に従い、繁栄を謳歌していた。この優雅で幸福な時代は、「小暗黒」まで、永遠に比すほど長い間続いた。
イェルムの死、小暗黒、トロウルの侵攻(嵐の時代)
無法な神々が、イェルムの正しき統治に対して叛乱を企てた。オーランスは下劣にもイェルムを暗殺し、この世界から蹴落とした。聖なる帝国は転覆し、太陽は堕ち、天空が地上の世界から退き、火山は冷え、暖炉の火は小さなおき火になってしまった。そしてそれは混沌の侵入を許し、すべての宇宙を恐怖で満たしたのだった。トロウルはオーランスと同盟して地表に侵攻し、すべての文明を破壊した。そして彼らは仲間割れを起こし、世界を千々に砕いた。イェルマリオは父イェルムがオーランスに殺されたとき、復讐のために立ち上がったが、返り討ちにあい、武器も折られてしまった。しかし傷つき、奪われ、あちこちへ追われても、彼は生命の火花を絶やさずに「暗黒」の時代を生き続け、凍てつき葉の落ちた森の中をよろめきながら、彼の輝きはそれに縋るエルフや人間を暖めた。彼は激しく闘い、「大暗黒」においては仇敵オーランスさえ助けるのだった。
宇宙鼠(嵐の時代)
ラツラフは凄まじい轟とともににガスを放ち、小鬼どもをひり出した。この宇宙鼠は空の天蓋のあちこちに糞を巻き散らし、神秘のベールに穴を開けた。タイレーニアは甘言と偽りの約束によって手なずけようとしたが失敗し、それが混乱を引き起こした。
死の発生(嵐の時代)
天宮の神々と混沌の族の不和が、世に一つの病を生み、創造主を病に落とし、死に至らしめてしまった。かくてこの世にあるすべてのものは死を運命づけられた。
スパイクの倒壊(大暗黒)
世界の中心には、天宮を覆うアダマントによって作られた巨大な山があった。カーガン・トールは天宮での地位を捨て、悪魔の不死宮への侵入を許した。それに続く反乱がスパイクを崩壊させ、宇宙山は震え、大激変が起こって消え去った。そして再び世界中が残酷なまでに清められた。天宮の神々の多くが死に、空の天蓋には穴が開いて、混沌の侵略軍が世界を一掃した。小鬼どもはその無秩序な本質ゆえに、混沌の最初の突撃に相対しえた。彼らはほとんど全滅したが、残った神々は覚悟を決める暇を得られた。
スパイクが爆発して世界に鋭い亀裂を残したとき、最初の創造と同じように、その亀裂のなかで新たな創造が始まった。混沌が障壁となったために、この新しい創造は世界の他の部分とは切り離された状態で成長・発展した。まず最初に新しい小宇宙に暗黒の少女(闇)が形を取り、次に海の従者(水)が、そして大地の淑女(地)が、続いて光の家臣(火)が形をなした。これが若きエレメントたちである。風はその次に形を取るはずだったが、神々の戦いの終結とともに新しい創造は終わりを迎え、それは時の外に囚われてしまった。
二回の洪水(大暗黒)
数ある災害のなかでも、二回の大洪水はすべての者に知られている。最初の洪水は北方から南方までを洗った。ペローリア南部にある地震湖ができたのはこのときである。それから一世紀後に湖の北側が氾濫を起こし、再建された文明を流し去った。
星の長たち(生への闘い)
ポーラリスは天国から外へと悪影響が流れるのを防ぐため、その穴の周囲に要塞を築いた。外の星の長たちは下の闇の世界を助けるために、光の軍隊が出撃していった所に似たような拠点を築いた。ポーラリスはまた、天国における彼の軍隊の移動が効果的に行われるように、荒廃した空の天蓋の暗礁や傾斜を計算した。彼は舞踏の女神を保護し、二人の間に舞踏の美しさと軍事教練の正確さを反映する天国の調和が生まれた。
時の始まり(大いなる盟約)
カージャボールは神代にワクボスによって殺され、地獄へ落とされた。彼はそこで最後の砦に集まっていた神々の残軍に相対した。すべての神が死の国に集まり、混沌による最終的な滅亡を待つばかりとなったとき、すべての神は協力してアラクニー・ソラーラが混沌と戦うのを助けた。彼女はカージャボールを網で絡め取り、その脚で彼を包み込み、激しく組討ち、ついには彼を生きたまま貪り喰った。その結果、エントロピーと存在の組合せが生じ、秩序ある宇宙を支配する時へと創り上げられた。アラクニー・ソラーラは神々の誓いを糸に紡ぎ、それで全宇宙を繋ぎ止めた(大いなる盟約)。
神々は古くからの仕事に戻ることができたが、時の降臨以前のように、制約に捕らわれず、思うが儘に行動することはできなくなり、別の世界へと引き籠もっていった。
イェルムの自己再生(大いなる盟約)
命を失い闇に落とされたにもかかわらず、イェルムは試練と困難の間、自らの純粋さと美徳を握りしめていた。最後にはその内なる力が発現して、彼の敵オーランスを呼び寄せた。彼は謝罪し、自身を犠牲にした。これが神の再生の糧となったのである。数え切れぬ年月の間見ることのなかった太陽が、東の地平線から昇った。そのときから新しい時代が始まったのだ。しかし混沌との戦いにおける暗黒の神々の功績を認め、一日の半分を夜とすることをイェルムは承認した。
遊牧民からの解放(曙の時代)
“調馬師”ハイアロールの息子たちは、イェルムの司祭たちが神の助けを呼ぶまで、ペローリアを隷属させていた。曙の直後、まるでイェルム自身が引き起こしたように、助けが到来した。太陽暦230年、彼らはジェナーテラ大陸最高評議会によってそこから追い払われてペントに住むようになった。ダラ・ハッパの民は遊牧民の圧政から解放された。
ジェナーテラ大陸最高評議会と新しい黄金時代(曙の時代)
光の軍勢は力を獲得し、神の導きによって彼らは神々の戦いで失われた不滅なる再びその手に掴むために、新しい完全な神を創り出す計画を立てた。その名をナイサロールという。この計画に惹かれたダラ・ハッパの民の参入により、評議会の権力は増大し、ついに太陽暦375年、この計画は遂行された。新たな神の誕生の瞬間にはイェルムは天空に静止し、時が止まった。彼はすべての混乱を鎮め、黄金の時代の如き平和と繁栄に満ちた支配を打ち立てた。
評議会の決裂と“浄化の使徒”アーカット(曙の時代)
ジェナーテラ大陸最高評議会は、新しい神の創造について対立し、かつての団結は失われた。ドラゴン・パス、トロウル、ドラゴニュートが離反した。繁栄は、内なる影と呼ばれていた邪悪な存在、グバージの裏切りによって終焉を迎えた。アーカットは遥か西の彼方からやってきて、この怪物を打ち倒し、その肉体の欠片を地に振りまいて、閉じ込められ囚われてあったナイサロールの純粋な光を再び世に解き放った。新たな神となったアーカットは、けれど、いまや自分の変容に悩まされている。
ワームの友邦帝国(帝国の時代)
突然変異によって生まれた翻訳者たちの助けによって、ドラゴン・パスの人々はドラゴンの秘密を解明し、ドラゴン魔術を使い始めた。支配者たちはしばらく臣民に人気があったが、やがて彼らを遠ざけるようになり、決断力の欠如から評議会の統一は崩れ、没落の道を辿った。太陽暦1100年、グローランサから竜族を一掃せんとするペローリアの人々は真黄金団を結成し、ドラゴン・パスを目指した。しかし彼らは竜の怒りを招き、太陽暦1120年、真黄金団とドラゴン・パスの人々は竜によって虐殺され、この地から人間は一時完全に消え失せた。
赤い月(最近の数世紀)
赤の女神は神代に生まれたが、先史時代の戦争で混沌の怪物に破れ去り四散した。それは完全な死でもなければ、完全な生でもなかった。時が始まってからの秘密評議会の精霊たちの一団による数世紀に渡る計画と実行によって、ついに1220年、この女神を組み立て生き返らせた。新しい女神が生まれたのだ。赤の女神が現れたとき、時の外に囚われた若きエレメントたちが解放された。彼女は時の内側で生まれたがゆえに定命の者であり、トーランの街の救貧院に生まれた卑しい若い娘にすぎなかったが、七人の賢者の導きにより、急速にその本来の能力を開花させ、ペローリアの人々に新たな癒しの教えを与え、自由と寛容を説いた。1228年、彼女はヒーロークエストに身を投じた。四年後、彼女はクリムゾン・バットを連れて再び信者のもとに姿を現し、そしてダラ・ハッパの征服に乗り出した。1247年、彼女は恐るべきゴッドクエストに旅立ち神性を獲得して、周りの大地を持ち去って世界から天空に昇った。赤の女神の昇天の後、彼女の後継者である不死者の赤の皇帝の下、中央集権化された神権政治体制を敷くルナー帝国が整備された。帝国は女神の恩恵である様々な技術革新によって繁栄している。とくに軍事学の成果には華々しいものがあった。中でも魔術師と聖職者を部隊に編成しての集団使用は勝利に大きく貢献した。こうして帝国は徐々にその版図を拡大していった。
カルマニアの征服(最近の数世紀)
1230年、西域のカルマニアは帝国と戦争状態となり、80年に渡る抗争の末この国は帝国に組み入れられ、帝国の西を守る防波堤の役割を果たすようになった。しかし大破門によって西との交通が遮断されると、外敵の侵入はなくなり、この地にも平和が訪れた。
遊牧民の侵攻と敗退(最近の数世紀)
第3ウェインの20年、シェング・セリレス率いるペントの騎馬民族が先祖の牧草地を取り戻そうと再度の侵攻を試み、ペローリアのほとんどを手中におさめた。しかし、彼らは最後に自分自身に負けた。自らの貪欲さと、偉大な指導者を捕らえられたことによって。騎馬蛮族の侵攻によって廃墟同然となったペローリアに“踊り子”ホン・イールが現われ、帝国を一新した。彼女はルナーの支配から離れていた属領地を復旧させ、新しい領土を獲得し騎馬民族を最後の一人まで倒した。そしてホン・イールは踊りながら宇宙の端までいき、賢明にも彼女に縋ったペローリアの人々のために祝福された豊饒の糧トウモロコシを持ち帰った。そして、騎馬遊牧民に恐怖と破滅をもたらすために、赤の皇帝とゴゴーマの間に復讐の女神である“馬喰い”ヤーラ・アラーニスが生み出され、帝国各地に昇月ノ寺院が献堂された。
オーランスの打倒(最近の数世紀)
赤の女神は働き、踊り、世界の枠組みと闘って、活路を開いていった。そしてついに彼女は中空の覇権を賭けてオーランスに挑戦した。天界での神話的闘争は、地表世界に反映して政治的闘争を引き起こした。オーランスの軍隊は敗北した。彼の信者は脅かされ、おとしめられたそしてペローリアの上空の空は、穏やかで静かになった。ルナーの女傑フワーレン・ダールシッパは属領地の蛮族を平定して帝国に併合した。また彼女は、名高く美しい都市ジラーロを建設し、魔力の街道を作った。街道は属領地を十字に横切ている。彼女は後に女神となり、属領地の人々に愛されるようになった。
聖王国の征服(最近の数世紀)
第7ウェインの45年、帝国は、南岸から海賊に、西からディターリ族にそれぞれ聖王国への攻撃を示唆し、聖王国は事実上崩壊した。ファラオは倒され、国内は完全な分裂状態に陥って、聖王国のほとんどは帝国の軍門に下った。最後の拠点ホワイトウォールも年内には陥落すると言われ、そうなればオーランス神に対する赤の女神の勝利は完全なものになるであろう。

Extremum Scriptum "Mythoes Lunarorumæ"