海の神話
Mythoes Marisgenarum
 
流れ(創造以前)
かつて世界は宇宙を渡る一つの流れであった。いくつかの理由によって、その流れは真水と塩水に分かれ、暖流と寒流に分かれた。そして流れは最後にこの世界の神々をかたちづくった。
宇宙山(世界の創造)
最初の物質は世界の中心で巨大な山の形になった。初めのことはこの山の中か上で起こった。
マースドライア(植物の創造)
水には植物の父フラマルの長女マースドライアの子らが満ちている。マースドライアの子らとは、藻、海草、植物プランクトン、海エルフのことで、彼らの重要性は大洋でも変わらない。
トレイナ(動物の創造)
トレイナは幾つかの存在とつがって水棲動物すべての母となった。暗黒の精霊との間には蚯蚓、海甲虫、烏賊、ロブスターといった無脊椎の生物をもうけた。大地からの恋人との間には水蜥蜴、海蛇、すっぽん、そして最も恐ろしい従兄弟たちであるエラスモサウルスやモササウルスを孕んだ。捕らわれた空の生物との間には常に泳ぎ回る船鳥、羽の無い巨大な鶴、鴎、あじさし、家鴨、そして泳ぐ能力を持った青い羽の海鷲といったしばしば水域に集まる海鳥の一群を生んだ。横柄な大気の神との間には海豚や鯨やあしかのような大気を呼吸する海の生物を身ごもった。しかし彼女が一番愛したのは魚の父ゴウロッドであった。彼らは寄り添って、底の深い場所と浅い場所、水の冷たい場所と暖かい場所、人のよく行く場所と決して目にしないだろう場所などいろいろな場所を住みかとした。そのため魚は豊富にいるのである。
聖なる海の種族は次第にその神性を失い、定命のものとなった。河が海から離れて流れを溯るに従って、細く小さな部分に分かれていくように。
海の神々の末裔(古き種族の創造)
上半身が力強い男で下半身が魚である創始者ファーゴンは海ニンフの母ミリンサと定命の祖父との子であった。そして彼はミリンサとの間に十人の強靱な息子をつくった。この息子たちは父親のような姿をしており、魚人族の祖先となった。
ゴウロッドの恋(黄金の時代)
ゴウロッドは大地の精霊の愛を求めたが、アーナールダはその娘にこのような醜い神と結婚することは大地のどこであれ許さないと戒めた。娘は大地の一部を引き裂いてそれを海に浮かべた。こうして出来たのが浮遊国キルレラである。そこに住むのはユールマルの化身であった。
嵐の時代、神々の戦い(嵐の時代)
大気の神々の長ウーマスに率いられた自由の革命軍は、腐敗し無意味となった火の神々の支配を覆した。他の神々もこの大宇宙の戦いに加わり、彼らが武力で世界を制した。ローリアンは神々の戦いにおいて天空へと侵攻し、火の神々を征服した。それ以後、天の川は天国の一部を取り囲み、そこから大地へと水が降ってくるのである。
マガスタの渦(大暗黒)
世界の中心には天宮を覆うアダマントによって作られた巨大な山があった。宇宙山は震え、大激変が起こって消え去った。宇宙山が爆発したとき、それによって生じた裂け目を塞ぐため、水の神々がその中に飛び込んでいった。このとき多くの水の神々は滅び去ったが、帰郷洋は何とかこれに成功した。そして他の水の神々は彼に力を貸すために、世界中に散ばる仲間に招集をかけた。この呼び掛けに応じて各地から水の神々が集まり、世界中の水が隙間に流れ込んだ。それ以来、穴は大洋の深みで終わりのない動きに満たされている。
時の始まり(大いなる盟約)
カージャボールは神代にワクボスに殺され、地獄へ落とされた。彼はそこで最後の砦に集まっていた神々の残軍に相対した。
すべての神が死の国に集まり、混沌による最終的な滅亡を待つばかりとなったとき、すべての神は協力して、アラクニー・ソラーラが混沌と戦うことを助けた。彼女はカージャボールを網で絡め取り、その脚で彼を包み込み、激しく組討ち、ついには彼を生きたまま貪り喰った。その結果エントロピーと存在の組合せが生じ、秩序ある宇宙を支配する時へと創り上げられた。アラクニー・ソラーラは神々の誓いを糸に紡ぎ、それで全宇宙を繋ぎ止めた(大いなる盟約) 。
神々は古くからの仕事に戻ることができたが、時の降臨以前のように、制約に捕らわれず、思うが儘に行動することは出来なくなり、別の世界へと引き籠もっていった。
ウェアタグ人(曙の時代)
緑の肌をした古代種族の末裔ウェアタグ人は、海竜の身体から造られた海上都市に住み、海上交通を一手に支配していた。しかし、彼らは神知者たちによってほとんど絶滅してしまった。
海の大閉鎖(最近の数世紀)
太陽暦920年、ブリソス島から放射状に広がった強い魔力は、その性質と速度を変化させながら次第に世界を包み込んでいき、海上からすべての船が消えた。神知者に向けて海から二回の破壊的な津波が襲い掛かった。海の王国に住むものにとっての恐怖の時代が始まったのだ。以来、沿岸から2km以遠の外洋航海の手段は完全に絶たれた。
海の大解放(最近の数世紀)
太陽暦1580年、“水夫”ドーマルは船隊を建造し、船上で特別な儀式魔術をかけて、外洋航海に乗り出した。一年前から似たような試みが行われていたのだが、失敗が続いていたのである。彼はその儀式を西ジェナーテラの人々に伝授し、他の者たちも彼の航海に続いた。それから一世代のうちには、船は海上を再び行き来するようになった。そして各地の貿易港は復活し、沿岸都市の復興が始まった。

Extremum Scriptum "Mythoes Marisgenarum"