オーランス教徒の神話
Mythoes Orlanthorum
 
魂を配する者(世界創造)
天宮の石灰色の神々の一柱、“魂を配する者”ラーンステイは荒涼たる不毛の大地を歩みながら種子と言葉とを広め、神と人の運命を定めていった。ラーンステイは北の地をいかにすべきか思案すべく、種子を蒔いて後に岩叢嶺山脈 [Rockwood Mts.] となる腰掛けを造った。彼が腰を下ろしたところに窪みができた。
ジェナートと穀物の神(植物の創造)
大地の女神の息子ジェナートは大地の女神とともに、数多の女神を生み出した。女神たちは穀類の母となった。
ハイキムとミキュー(動物の創造)
獣たちの父母ハイキムとミキューは様々な愛人たちとの間に種々多様な子を産んで、各々の領分に住まわせた。
神聖な先祖定命の祖父の末裔(人間の創造)
最初の人間は神々の共同作業によって彼らに奉仕する生物として創られた。そのため人間はすべての神の性質を少しずつ有している。しかし全体は部分の総和以上のものであり、神々は自分達が完全には理解できない何か新しいもの(人間性を創ったのだということに気付いた。人間は今なお、多くの独特な点で神々から独立している。
最初の人間は定命の祖父と呼ばれ、初めは他の神々とほとんど同じであった。ある日、フマクトが彼のもとを訪れ、新たに発見された力を試す気があるかと尋ねた。定命の祖父はそれに同意し、彼は最初に死(魂と肉体の分離を得た生物となった。このため、定命の祖父の末裔は例外無く死の運命を迎えるのである。
定命の祖父は神々の間で良く遊ばれた玩具であったため、彼には多くの末裔がいる。人間、エルフ、トロウル、魚人を含め、大部分の知性種族は、その家系を辿れば彼に行き着く。
アーナールダが虜囚であった時(黄金の時代)
美しく力ある女神アーナールダは、恐ろしい主人に捕らえられて盲目にされ、妾にされていた。彼女は助けを求めたが、嵐の時代に至るまで、恐ろしい主人を倒せる者はいなかった。
エレメントの神々で最後に生まれたのは嵐の神々だったが、彼らは先達の神々に自分たちの力が騙し盗られていたと抗議した。他の精霊や神々もその抗議に加わった。オーランスは生まれて間もなく、天宮に赴いてイェルムにダンスで決闘を申し込んだ。彼の戦舞に優雅なイェルムの側近らは度肝を抜かれ、勝利の判定はイェルムに下った。
竜の峠(黄金の時代)
ラーンステイの造った「窪み」にドラゴンが棲み着いた。この地は彼らに因んで、ドラゴン・パスと呼ばれるようになった。彼らは成熟し、その独特の文明を遺して去った。
嵐の時代、神々の戦い(嵐の時代)
大気の神々の長ウーマスに率いられた自由の革命軍は、腐敗し無意味となった天空の神々の支配を覆した。他の神々もこの大宇宙の戦いに加わり、彼らが世界を武力で制した。オーランスは、友人のユールマルの手を借りて、兄フマクトの元から死の剣を盗みだし、イェルムを切り殺して、アーナールダを救った。そして冬の神ヴァリンドが地上を支配した。フマクトは弟の不名誉な事件に憤り、風の神であることを止めた。この時代はあらゆる物の力が世界に勝るに至り、領土の僅かな重なりを巡って闘争が繰り返された。
ジェナートの死(大暗黒)
地表の支配者ジェナートは、彼の驚異の軍隊を率いて混沌の軍勢と戦った。しかしジェーナトは敵に貪り食われ、軍団は壊滅し、混沌の軍勢は一層強さを増したのであった。彼の存命中は平和と豊饒が満ちていた北方大陸も、もはや回復することの無いジェナートの生命力と結びついていたため、今や荒れ果てた不毛の荒野となってしまった。
銀の時代(生への闘い)
種族を超えて指導者と英雄たちの連帯が広がり、彼らの間に共同戦線が生まれ、政治的連合が結ばれていった。ストーム・ブルは混沌の大群を率いていたティエンを捕らえ、二つに引き裂いた。また悪魔と戦って侵攻を食い止め、アダマントの石塊に封じ込めた。しかしこれらの戦いで彼は深手を負い、その力は弱まってしまった。定命の祖父は神々の戦争後の荒廃に絶望していた人間に自らが得た秘密を教え、導いた。
光持ち帰りし者たちの探索(大いなる盟約)
オーランスは自分が世界にもたらした運命に気付き、世界の誤りを正すために光持ち帰りし者たちと呼ばれることになる若き神々を率いて、地獄へと赴き、死せる太陽神を助けることになった。試行錯誤の末、責任感と希望に助けられて、彼は死んだ神を復活させることに成功し、チャラーナ・アローイが太陽と世界に癒しを与え、世界は現在の状態へと生まれ変わった。
光持ち帰りし者たちが到来し、地界に喜びが満ちた中で春の侍女が大地の女神と太陽神の間に生まれた。数え切れぬ年月の間見ることのなかった太陽が、東の地平線から昇った。その時から新しい時代が始まったのだ。
暁の運び手(大いなる盟約)
エントロピーの悪魔がこの世に戻り、世界を混沌の無に併呑しようとした。だが六人の「暁の運び手」は辛うじて太陽を救い、神のものではない時間を生み出し、その時間は混沌も神をも征服し、新たな世界の秩序をもたらした。
盟友たちの世界評議会(曙の時代)
大暗黒を生き延びた盟友たちは、ドラゴン・パスを中心にゼイヤラン文明を築いていた。彼らは全知的種族を含む支配の評議会を結成した。彼らはこれを盟友たちの世界評議会と呼んだドラゴン・パス地方全域に使節が派遣され、彼らの真実を孤立した人々に運んでいった。
ジェナーテラ大陸最高評議会(曙の時代)
いくつかの地域は新しい政治組織を求めた。それはかつての評議会とは異なり、世界のものであることを求めず、そのメンバーには主要種族しか含まれていなかった。またかつての評議会が伝導を目的としたのに対し、第二評議会はペローリアの遊牧民に対する戦争を目的とした彼らは太陽暦230年、遊牧民をペントに追い払いダラ・ハッパの民を解放した。
混沌の占領と新しい光持ち帰りし者たち(曙の時代)
曙の時代の末期、定命の者たちの傲慢さも極まり、完全な神を創造しようとするに至った。彼の誕生の折、恐怖の前兆が全世界を揺るがし、一世紀も続く大いなる闘争の幕が開いた。
混沌と光の神ナイサロールに率いられた軍勢が侵攻し、ドラゴン・パス地方を占領した。西方の英雄アーカットはヒーロークエストを行う方法を確立し、それを他の人々の間に広めた。英雄たちは援助を求めるべく神界を探索する旅に出て、人々に計り知れぬ助けをもたらした。
ワームの友邦帝国(帝国の時代)
神知者が英雄ドロルガルドのカルトから竜の言葉の秘密を奪い、ノチェット市民にそれを教えた。言葉を学んだ者たちはドラゴン・パスのドラゴニュートに接触し、竜の力が人間にも開かれた。ドラゴン魔術に惹かれて多くの人間が集まり、そして彼らは自分たちも竜に近しい者であると見做した。だが太陽暦573年、知識の上で未熟であった彼らは内部分裂を起こした。
ヴィスティコスはドラゴニュート超王たちに逢い、天空の竜に謁見して第二の則を賜わった。彼は太陽暦575年、舞踏と狩猟団を創設し、竜的人間の生きる道を確立した。これを機にドラゴン・パスの人々は芸術から文化に至るまで竜的要素に支えられた社会を形成した。この社会変化は繁栄をもたらしたが、この変化を受け入れない人々は追放され、掃討された。彼らは昔日の伝統主義者団という地下組織を結成して抵抗していくことになる。
ついに太陽暦578年、ドラゴン・パスの人々をまとめ上げる宗教的・政治的支配体制としてワームの友邦帝国が厳かに成立した。帝国の努力によって、ジェナーテラの地に刻まれたグレート・ドラゴンが覚醒すると、そのエネルギーによって人々は、最初に復元に携わった者から次第に恩恵を受けていった。こうして古参の者の多くが天空の竜の魂と精神的な接触を果たしていく一方、新参者は舞踏と狩猟団の哲学への適応さえ果たせなかった。信者の不信と反目は募り、指導者たちは彼らを遠ざけるようになった。この機に乗じた昔日の伝統主義者団は各地で抵抗運動を展開し、国境紛争が繰り広げられた。そして太陽暦907年、記録的な厳冬の年に騒乱はドラゴン・パスに達した。
指導者層は危機対応の決定に際し、決断力の欠如から分裂状態に陥いり、各地で反乱が起こした。ドラゴニュート超王は他種族に与えた知識がもはや正しく用いれていないと判断し、太陽暦1042年、重要人物の殺害と秘宝の奪取に乗り出し、ワームの友邦帝国は滅亡した。
ペローリアの人々は、世界から竜族を一掃せんと徹底的な殺戮を始めた。太陽暦1100年彼らは真黄金団を結成し、ドラゴン・パスに進軍した。しかし彼らは竜の怒りを招き、太陽暦1120年、人間と竜の闘いによって、ドラゴン・パスから人間の姿は一時完全に消え失せた。
海の大閉鎖(最近の数世紀)
太陽暦920年、ブリソス島から放射状に広がった強い魔力は、その性質と速度を変化させながら次第に世界を包み込んでいき、海上からすべての船が消えた。海の王国に住むものにとての恐怖の時代が始まったのだ。以来、沿岸から2km以遠の外洋航海の手段は完全に絶たれた。
かつてジルステラ帝国スロントス大公領として一つにまとまっていたマニリア地方は、大封鎖の影響で南部地方が海中に没し、ジルステラの支配から離れ、オーランス人のものとなったこの地はラリオスとドラゴン・パスを結ぶ唯一の通商路となったため、彼らは大変に繁栄した。
ファラオと聖王国(最近の数世紀)
太陽暦1313年、謎の異邦人ベリンタールが危険な海を泳いでやってきて、ケタエラにあったトロウルの王国を倒し、太陽暦1318年、聖王国の誕生を宣言した。彼は新しい不死性を研究して、選ばれた賛同者の肉体に取り憑き、使い古すと次々と取り替えるようになった。
海の大解放(最近の数世紀)
太陽暦1580年、ノチェットの卑しい職人であった“水夫”ドーマルは、マガスタ神から霊感を、“賢者”フンラーニから教えを受け、船大工の“形作るもの”ガラーズの倉庫の床にタイル張りされていた昔の船の設計図と魔法使いの助けによって船隊を建造し、船上で特別な儀式魔術をかけて、外洋航海に乗り出した。一年前から似たような試みが行われていたのだが失敗が続いていたのである。彼はその儀式を西ジェナーテラの人々に伝授し、他の者たちも彼の航海に続いた。それから一世代のうちには、船は海上を再び行き来するようになった。
聖王国は東方に向けて航海を行い、まずテシュノスに貿易港を建設し、さらに東方のクラロレラ帝国を目指した。しかし太陽暦1587年、艦隊はクラロレラ海軍と衝突し、敗北した。それでも彼らは探索行を続け、太陽暦1598年、東方諸島に到達した。こうして東方諸島・テレオス島・マニリアの航路が確立され、各地の貿易港が復活し、沿岸都市の復興が始まった。
ルナー帝国の侵攻(最近の数世紀)
ペローリアに成立した混沌を認める赤い月を奉じるルナー帝国は、ペントの遊牧民の襲来を凌ぐや、南方に侵略の矛先を向けた。太陽暦1490年、ターシュを併合し、近年サーター、ヒョルトランドを次々に征服していった。帝国の搾取に対する反乱は各地で起こっているが、いまだ大規模な反乱にまでは発展したことがない。
聖王国の滅亡(最近の数世紀)
太陽暦1616年、南岸からは海賊の、西からはディターリ族の攻撃を受け、聖王国は事実上崩壊した。ファラオは消失し国内は分裂状態に陥った。いまや聖王国のほとんどはルナーの軍門に下り、最後の拠点ホワイトウォールも年内には陥落すると言われている。

Extremum Scriptum "Mythoes Orlanthorum"