南方の神話
Mythoes Pamaltelarum
 
祖父なる大空と祖母なる大地(世界の創造)
はじめ夫婦なる二柱の神があって、名をヤンモーラとクロニスパーといった。その二人の子らを古の神々と呼びなす。ロウドリルやイェルムやボロンゴがそれだ。これら子供に当たる神々は相戦い、年とった二柱の神は天地の果てに逃れた。そこで二柱の子供なる古の神々は、自らその司るものを創り、それを寄せ集めてこの世を創り為した。
泥からの創造(人間の創造)
古の神々には大いなる力があった。その思うままに使える時も、今の我々の代に比べたなら信じられぬほど多くあった。そして神々も我ら人の子と同じく美しいもの、役に立つものを創りあげることに喜びを見出していた。そうはいっても時には間違うこともあって、そんなときにはジェルマーやエルフのようなものができた。さて、神々の創ったものの中でも殊に優れたるものの一つに、世に初めての人があった。我らアギモリの父母に当たるこの人は、神々の評議会によって43の異なる物質から創られた。そのうち最も重要な成分が地であった。
最初の人間はすべて女であった。彼女らは自分たちだけで問題もなく女の子供を産んでいた。ある時、初めの女たちの内の五人が反目して、それぞれ秘密の武器を作った。これが最初の五人の男たちである。彼らは即座に初めの女たちに叛乱を起こした。そして彼女たちを娶り、パマールトを族長にした。
薬草の血統(植物の創造)
アギモリの最初の祖先は、死んだ後に埋葬された。その墓の上から神聖な植物が生えてきた。それはパマールテラの狩猟採集民の役に立つものであった。母なるニャーンカは世界中を歩き回って大地を祝福し、彼女の栄光ですべてを覆い、その植物を地表に広めた。こうして緑の時代が到来した。また彼女はその生殖能力を使い、子どもの作り方を人々に教えた。
アートマル帝国(黄金の時代)
古い神々がこの世を治めていた頃、青い月アニーラの息子アートマルが天から落ちてきた。そしてパマールテラの中ほどに、偉大で巨大なアートマル帝国をつくった。帝国は完璧を求め、少しでも劣っていると見なされたものはすべて帝国の辺境遥か彼方へと追い払われるかこき使われた。彼の国で心のままに幸多き暮らしをしているのは青い肌の民ヴェルダングだけだった。
古の神々の死(嵐の時代)
世界の創り手であり、かつてパマールテラを支配していた古の神々は戦争と悪徳のうちに力を失い、ある者は新しい神々に追いやられ、ある者は引退し、その能力を回復させることができなかった者は代わりに人間であることに耐えねばならなくなった。
アートマル帝国の滅亡(嵐の時代)
アートマルは悪しき嵐の神々によって不具にされ、帝国の冷徹な完全主義は侵略してくる嵐の神々の荒々しさに耐えられず滅亡し、文明は消え去った。帝国はナーガン砂漠となり青い肌の民は隣人や以前の友人の奴隷にされた。北の豊饒の地は悪意ある密林に深く覆われそこには野蛮な非人間がはびこった。沼の魔は人を滅ぼすために泥濘の軍団を送り出した。悪い時代がきて大地が干上がると、かつてニャーンカが旅して眠った場所はすべて緑のオアシスとなった。
生ける汚れ(大暗黒)
宇宙山が砕け散って、その後に残った暗い暗い穴からヴォヴィシボールが這い出てきた。彼はその傍らにセッド、ポチャーンゴ、マリア、オンパラム、そういった悪い神々を従えて、我らのうちに愚かさと情けを知らぬ心を、また強欲と我のみ良けれと願う心を振りまいていった。ヴォヴィーシボールはパマールトに出会うまで一対一の挑戦を受けて負けたことはなかった。
パマールトの王国(生への闘い)
古の神々が消え、帝国が滅んだ後、パマールトの出番が来た。彼が長となったとき、この世は今より遥かに悪かった。魔法使いや邪つ神がこの世を侵し、すべての者が病み衰えて死にかけだった。ひとりパマールトのみが大いなる力をいまだ保っていた。彼はアギモリを導いて正しき路を歩ませ、以てパマールテラに連れてきた。彼は大地を生きた状態に保つという責務に従い、アギモリに新しい生き方を確立し、我らとともにその時代の敵すべてを打ち負かし、裏をかいて倒し、邪つ神の手から命を奪い返した。
造山運動(大暗黒)
兄弟のダーゼイターが神秘主義を求め、イェルムが自己の真価を試されていたとき、ロウドリルは常に日常の悦楽に溺れていた。ある日、神々の戦いで天空の槍が混沌のどろどろとした物体を貫こうと大地を刺し通した。槍はぽきりと折れ、その中に住んでいたロウドリルを解き放った。そして彼は地上に現れ、火山の神となった。パマールトは自らの力を示し、友を守るために、ロウドリルに北方の敵から身を守る障壁となる山脈を造らせた。
時の始まり(大いなる盟約)
カージャボールは神代にワクボスによって殺され、地獄へ落とされた。彼はそこで最後の砦に集まっていた神々の残軍に相対した。
すべての神が死の国に集まり、混沌による最終的な滅亡を待つばかりとなったとき、すべての神は協力して、アラクニー・ソラーラが混沌と戦うことを助けた。彼女はカージャボールを網で絡め取り、その脚で彼を包み込み、激しく組討ち、ついには彼を生きたまま貪り喰った。その結果エントロピーと存在の組合せが生じ、秩序ある宇宙を支配する時へと創り上げられた。アラクニー・ソラーラは神々の誓いを糸に紡ぎ、それで全宇宙を繋ぎ止めた(大いなる盟約) 。
神々は古くからの仕事に戻ることができたが、時の降臨以前のように、制約に捕らわれず、思うが儘に行動することはできなくなり、別の世界へと引き籠もっていった。
移住についての物語(曙の時代)
大きいものから小さなものまで、たくさんの部族がパマールテラの草原と岸辺を渡って新しい地方を探訪し、奇妙な生き物や珍奇な種族と出会った。
病める帝国(帝国の時代)
我らが混沌を見張る手を緩めたとき、心拗けた神知者どもが企み事をして我らを悩ませた。彼らは祈りなく信なき教えを広めようと、一部のアギモリを魔法と異教の神々で堕落させた。六脚帝国と呼ばれていたこの帝国は力強く富裕でもあったが、最後には自らの病弊によって分裂し、ついにホン・ホールビクツによって滅ぼされた。
海の大閉鎖(最近の数世紀)
太陽暦920年、ブリソス島から放射状に広がった強い魔力は、その性質と速度を変化させながら次第に世界を包み込んでいき、海上からすべての船が消えた。神知者に向けて海から二回の破壊的な津波が襲い掛かった。海の王国に住むものにとっての恐怖の時代が始まったのだ。以来、沿岸から2km以遠の外洋航海の手段は完全に絶たれた。
クレシュの勃興(最近の数世紀)
アギモリは歩くことしか知らなかった。馬も荷車も使わなかったのである。それゆえクレシュの勃興は謎めいたことだった。力ある尼僧に率いられた家族は木造の巨大な馬車を造った。彼らは各地で尊敬をもって迎えられ、異国風のハーブやスパイス、珍しい魔術を売って旅をした。
エンリコ岩礁の戦い(最近の数世紀)
北方の魔法使いの艦隊が北岸の一帯を略奪した。しかしこのとき我々は儀式の秘密を盗み、艦隊を建造した。太陽暦1594年、両艦隊はエンリコ岩礁で激突したが、双方とも壊滅した。

Extremum Scriptum "Mythoes Pamaltelarum"