フロネラ
Fronela
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf
輸入品:
セシュネラからの鉄、セシュネラからの馬、ラリオスから手工業製品とインディゴなどの染料、ペローリアからの穀物、エスロリアからの穀物(一部)、エスロリアからの繊維製品、東方からの繊維製品、少量の奢侈品
 
輸出品:
ソッグ市からの魔道の呪付物、ソッグ市からの魔道の呪式、ノースポイントからリンネル、サウスポイントからのリンネル、ベアハウンド(セシュネラやより東の地方で闘犬で使われる大型犬)

 フロネラの交易はシンディクス大破門の雪解けと海の大開放によって再開された。地域的な交易は定住地域では小さな村々の日曜市で、より未開な地域では氏族の集合地で行われる。この地域の主要な作物は大麦だが、他にもさまざまな穀物が栽培されている。もう一つの主要な作物は亜麻で、リンネルの織物の製造に使われている。

 ジャニューブ川はこの地域を横断して自然の交易路となっており、またペローリアと西方をつなぐ回廊をなしている。しかし、戦争王国がジャニューブ川にまたがって蟠踞するようになって、ジャニューブ川交易は気息奄奄である。

 内陸の交易は、ジャニューブ川に隔てられた東西に長い2つの地域でそれぞれ行われている。フロネラ西部の貿易はソッグ市とロスカルムの商人たちによって牛耳られている。フロネラ東部ではリバージョインと淡水海を結ぶ交易路が他を圧倒している。この地域の商人のほとんどはエティーリーズの信者である。

 ハイ・ラーマ峠からイーストポイントに至るキャラバン・ルートによって、エティーリーズの商人はペローリアからの輸出品をモスタリの商品と交換している。

 ロスカルムからフロネラ東部、ペローリアに至る交易路は、ソッグ市に至るキャラバン・ルートを抜けて、[現在は戦争王国を避けて]アインポール [Einpor] 、モレーネ [Molene] 、カルスタール [Karstall] を経て、リバージョインに達している。

 タストラルからジャニューブ川へ抜ける陸路のおかげで、ロスカルムの商人は特別な動物にまつわる商品を得ることか出来る。トナカイの角をはじめとするアンコリング族 [Uncoling] の民芸品や、冬の森から僅かに流出するアルドリアミの商品が名高い。

 淡水海に面したラソレラ西部は材木の供給源となっている。高く真っ直ぐに伸びた針葉樹は帆柱として高い需要がある(1)

 ゾーリア [Zoria] ではフロネラ・ベアハウンドを調教しており、これの一大供給地である。この犬は川を下ってリバージョインで船積され、ペローリアへ転送される。ロスカルムでもこの犬の調教が始められて、西方一帯に輸出されているが、ロスカルム産は犬の専門家たちから二流と見なされている。

 「フロネラのポイント・リンネル」は、毎年2回で大規模な織物市が開かれるが、そこで商われる。1回目は海の季の最終週に一週間にわたってノースポイントで開かれ、2回目は地の季の最初の週に一週間にわたってサウスポイントで開かれる。商人たちはケタエラなどの遠方からやってきて高品質の織物に高値をつける。外国商人がもたらす商品を買いにこの地方の商人たちもフロネラ中から集まってくる。

ルナーの対フロネラ政策に関する覚書:フロネラはルナー商人にとって市場以上の価値を有している。というのも、もしジャニューブ川が開かれて交易できるようになったならば、帝国は海と川を伝ってセシュネラまで達することが出来るからである。帝国は鉄をより容易に手に入れることが出来るようになり、鉄への代価を引き下げることが出来るだろう(2)。ルナー政府はフロネラ東部におけるエティーリーズ・カルトの立場を強化するために、同地への穀物輸出を奨励している(3)。可能ならば河川交易を再建するための行動を起こすだろうと予測される。


  1.   竜骨を有するタイプの船舶は、マストの高さがその船舶の大きさを決めるので、確かにものすごく需要があるだろうし、計り知れない価値がつく。ガレー船も、櫂で漕ぐのは凪か戦闘のときだけで、普段は帆走するので、やはりマストは重要である。
     加えて、グローランサの森にはアルドリアミがいて、彼らは木が切られるのを喜んではいないだろうから、材木の価値は地球より高いと思われる。

  2.   仮にルナー帝国がセシュネラの鉄を手に入れられるようになったとしても、そのルートにはジャニューブ川諸都市、ソッグ市、ロスカルム、アロラニート、そしてセシュネラがあり、これらの港々に立ち寄る際に払う関税を考え、なおかつペローリアにもジョード山脈があることを考えれば、とてもセシュネラの鉄がルナー帝国を魅惑するとは考えにくい。これら周辺諸国を征服するとしても、やはりその軍事費と鉄から上がる利益では引き合わないと思われる。
     あるいは、鉄だけではないのかもしれない。オスリル川は上ペローリアから下ペローリアに流れ、ポラリストール・ジャニューブ川は下ペローリアからフロネラに流れる。そして、ネレオミ海流はフロネラからセシュネラに流れている。この循環する流れに乗せた交易は、地球における大西洋環流を利用したヨーロッパ・アフリカ・カリブ海の三角貿易のように、ペローリア、セシュネラ、ケタエラをつなぐ効率的な三角貿易に成り得るかもしれない。
     とはいえ、このような政策が行われるのはケタエラが安定して以後のことだろう(その日は来ないが)。現在、1621年、ルナー帝国のあらゆる政策はケタエラの安定と国内の異端弾圧に向けられているはずである。
     だがそのような場合でも、カルマニア貴族たちの独走は考えられる。カルマニアは、江戸時代の薩摩藩のように、唯一フロネラにつながっているという利点を持っており、彼らは自分たちのためにこの利点を活用しようとするかもしれない。この場合のフロネラへの干渉は、ルナー本国の後押しもなく、混迷するフロネラの情勢からカルマニアは抜け出すこともできずずるずると引き込まれていき、ルナー帝国はまったく予期しないかたちで二正面作戦を強いられることになるのかもしれない。

  3.   フロネラ各国は、シンディクス大破門下の孤立した状況を生き抜いてきたのであり、彼らはそれぞれ食糧自給ができ、ペローリアの穀物に依存しなければならない、という状況は考えにくい。
     が、仮にそうであるならば、フロネラ各国における急速な都市化(たった30年で!)、それに伴う都市の貧困層の形成と、農村の荒廃が予想される。また急速な都市の発展の背景には、都市の魅力の増大、わけても大規模な交易の中心地になっていることが考えられる。
     歴史上、穀物の供給を他に頼った都市には、アテネ、ローマ、コンスタンティノープルなどがあるが、いずれも交易の中心地だけでなく政治の中心地でもあった。であればこそ、穀物を買わなければならないほどの人口があったのである。このような状況が想定できる都市は、かろうじてソッグ市のみか。
     確かに、フロネラの富裕な人々は、フロネラの大麦よりもペローリアの小麦を好んで食べているだろう。だが、そのような規模では穀物戦略は成り立たないし、成り立たせようとするなら、ルナー帝国が輸出する穀物をフロネラの穀物より安く売るために買い支えてやらなければならない。だが、そのようなことは今はありえそうもない。