エミーネ、帰宅するの巻 |
Emine Comes Back Home |
Prax, 42nd - 44th Earth 1622 S.T. |
- 帰宅
そして夜が白々と明け始め、ルナーの騎兵たちも我がメンバーたちもぽつりぽつりと起き始めました。私たちはルナー兵が差し出した昨晩のごった煮の残りを食べ、私とフィリシアはそれぞれ騎馬の1騎に相乗りします。
一団が北上してまもなくすると、ちらほらと収穫を終えた田畑が見え始めました。そして、昼前には大廃都の城壁が望見されました。一団は大廃都の城壁を右手に眺めながらさらに歩を進め、そして、1つ目の農民区に通じる城門は通り過ぎ、2つ目のルナー軍司令部に面する城門に達しました。城門にはいつものように市内に入るために検問を受ける旅行者たちの列が連なっていましたが、私たちはすんなりと市内に入ることができました。ですが、そう喜んでもいられません。私たちは城門をくぐってすぐの司令部で、ルナー兵に尋問を受けることになるのですから。
城門をくぐって司令部の前の広場で一団は馬を止め、荷物を下ろしました。隊長が私たちに言います。
- 「
- さてと、パヴィスまでは連れて来てやったが、お前らにはもう少し我々に付き合ってもらうぞ。」
- 「
- あぁ、分かっている。」
- 「
- それと、だ。お前らのうち、2人の不気味な女、そう、お前とお前だ、こいつらはそのまま施療院へ連れて行ってやってもいいぞ。」
- 「
- ということだそうだが、どうする? エミーネ。」
- 「
- アーナールダ様の下へ駆け込めるなら、否も応もないわ。」
- 「
- お…! なるほどな、無知とは恐ろしい。俺は連中が施療院と言ったらティーロ・ノーリ(1)寺院に決まってると思ったが、そうか、お前はアーナールダの信徒だったな。よし、おい、隊長! お願いする、この2人をアーナールダ寺院へ連れて行ってくれ。」
- 「
- アーナールダ寺院だと? どういうことだ?」
- 「
- 見ての通り、こちらのエミーネは“癒し手”アーナールダの信徒だ。彼女がルナーの癒し手に掛かることは彼女の信仰にもとることになる。」
- 「
- ふん、相変わらず回りくどい。だが、分かった。事情聴取は寺院を通じてやってもらうぞ。おい、ハーフューズ! 足労だが、この女たちをアーナールダ寺院へ連れて行け!」
ハーフューズと呼ばれた男は、かしこまった、と応じるや、馬上にフィリシアを乗せ、自分は徒歩で手綱を取って、広場を離れました。私も後から着いていきます。ちらりと振り返ると、アルヨンはもうルナーの隊長と何がしかを話していて、私たちの方を見てはいませんでした。胸に軽い痛みを覚えて、視線を元に戻すもこらえきれず、再び振り返って叫びました。
- 「
- アルヨン! またね!」
アルヨンは私のほうに振り返り、微笑んで手を振ってくれました。私はその映像を胸に大事にしまいこみ、ちょっと先行したフィリシアを乗せた馬に小走りに追いつきました。私たちは下町を抜けて、市民広場に入ります。広場ではいつものように行商人たちが市場管理官に鼻薬を嗅がせて違法に商品を広げ、足の踏み場がありません。喧騒、魚の焦げる匂い、荘重なイサリーズ(2)寺院、そのどれもが何と懐かしく感じられることでしょう。そして、イサリーズ寺院の裏に回るとそこには、重厚なアーナールダ寺院が鎮座していました。
すでに窓から見ていたのでしょう。寺院事務所の扉は内側から開き、スィベル侍祭は駆け寄って私を抱きしめました。
- 「
- お帰り! エミーネ。」
- 「
- ただいま、スィベル姉さま(3)。」
私が安堵感に浸っているのもつかの間、ルナー兵は居丈高にスィベル侍祭に申し付けます。
- 「
- おい! この容疑者2名は現在、当局の取調べを受けねばならぬ身の上だが、罹患しておるゆえ、その治療を汝らアーナールダ寺院へ委託する。治療の経過報告を2日ごとに当局へ届けで、完治の後は両名を当局に出頭させるように。」
- 「
- かしこまりました。ご苦労様でございます。」
- 「
- では、頼むぞ。」
そう言うと、ルナー兵は馬を曳いて去っていきました。
- 「
- どういうこと? 容疑って。それと、病気って。」
- 「
- う~ん、とりあえず、中に入ってお茶でも飲ませてくれへん?」
- 「
- ちょうど、フルンストゥラチ(4)をつくっていたところよ。間に合ってよかったわね。」
私はフィリシアをスィベル侍祭に預けると、アーナールダ様の御神体にお香を焚いて、生還の礼を述べました。そして、入信者共用の大部屋に入り、旅装を解いてベッドの下に仕舞い、下着を替えて、自分のゆったりとした貫頭衣をかぶって、広間に行きました。すでにみんなはテーブルにお茶を並べ始めていたので、私も手伝います。
- 「
- あの、フィリシア、私の連れの女性はどうしはりました?」
- 「
- 呪文で眠ってもらっているわ。体力の消耗が激しいみたいだから。あなたも、休んだ方がいいんじゃない?」
- 「
- はい。お茶を戴いたら存分に。」
支度が終わって、お茶の時間の合図のベルがチリン、チリンと鳴らされると、大女祭様をはじめとする大奥さまたちも広間にやってきました。
- 「
- お帰りなさい、エミーネ。ずいぶん大変な旅だったみたいね。」
- 「
- はい、大女祭様。せやけど、アーナールダ様のお蔭で無事、帰ってこられました。」
- 「
- そうね。もっとも、赤い方々(5)は自分たちのお蔭だ、と主張しているけど。何があったか話してくださる?」
私は、この数日間に起こった出来事を簡潔に、また恐怖を引き起こす部分に関してはあいまいにして報告しました。
- 「
- …ということやったわけです。」
- 「
- ところで、そのアルヨンていう人、どんな人なの? ガーラス系? クロガー系?」
- 「
- 姉さま…、関心の焦点がずれとる。」
- 「
- はいはい、質問はまた後にしましょう。アルヨンという御仁については、いずれエミーネ本人につれてきてもらうことにして。」
- 「
- だ、大女祭様まで。」
- 「
- ほほほ…。エミーネ、あなたは今日の晩課式(6)は休んでいいから、早く寝なさい。他の皆さんは、食器を片付けて。」
- 「
- ほなら姉さま方、すいません、お先に失礼します。」
- 「
- は~い。いい夢、見てね。ぷ、くくく…。」
私は、自分は無意識にもそんなにアルヨンのことを強調していただろうか、と訝しみながら、大部屋の自分のベッドに行き、貫頭衣を脱いで、久々にベッドの上に脚を伸ばしました。
- 砂の夢
その晩は、疲れから訳もなく寝入ることができました。が、眠ってからしばらくして、頬の上をさらさらと何かが撫でるのに気付き、目を覚ましました。きっと、下ろした髪が風にゆれて頬を撫でるのだろうと思い、何気に手で払うと、手で払われた頬が砂の城のように崩れ去りました。私はびっくりして跳ね起きると、私は砂の上にいて、腰と両脚の下半分は砂と混ざり合っていました。そして今も私の身体は砂のようにぽろぽろと崩れ去っていきます。うわっ、と叫ぼうとすると、唇が崩れ、口を慌てて押さえた手も、肘の方から崩れていきます。私は口を押さえたまま涙を流しましたが、その涙すら私のほほを溶かしていきます。泣いちゃダメだ、泣いちゃ。そう自分に言い聞かせ、私は息もせずじっとしていました。
私がじっとしていると、何者かが私の腰を裸足で蹴りつけました。
- 「
- 何すんねん? 崩れ去ったら、どうする?」
- 「
- 崩れ去る? 何を寝ぼけてんのよ。静かにしてくれないと眠れないじゃない。」
振り向くと、私の隣にはコレルという名の入信者が寝ていて、私の方に身体を起こし、文句を言ってるのでした。
- 「
- あ、夢? 良かったぁ。堪忍な、コレル姉さん。」
- 「
- まったく。次にうるさくしたら、枕で顔を埋めてやるんだから。」
- 「
- (はいはい。はよ寝くされ、小娘。)」
翌朝目覚めると、私の顔はいくつかの枕に埋まっていました。
- 介護
私は起き出すと、布団をたたみ、身支度を整えて、みんなと一緒に朝食の準備をします。寺院での朝の食事は、パン屋が届けてくれる焼き立てのパン、同じくチーズ屋が届けてくれるその朝に絞ったミルクとヨーグルト、そしてジャムか蜂蜜が付いているのが普通です。この朝の食事もそうでした。準備が済むとみんなで早課式に参加し、夜明けを喜ぶ鳥たちとともに早?を捧げ、朝食をいただきます。しかし、私は昨晩もお茶とお菓子しかお腹に入れていないのに、すっかり体が弱っているようです。パンをいくら細かくちぎっても、のどを通すことができません。今朝のジャムは山葡萄でしたが、これをヨーグルトにかけてのどに流し込み、ミルクを飲んで食事を終えました。パンは他の娘にあげました。
朝食が終わると、これを片付けた後は、午睡までは労務です。いまは地の季の終わり、仕事は葡萄踏み(7)か、きのこ狩り(8)か、それともブタの屠殺(9)か。きのこ狩りはサボりやすいので人気が集中します。
- 「
- セレン姉さん、あてはどの班に着いていったらええですか?」
- 「
- あ、エミーネ? そうね、スィベル姉さまに聞いてくるわ。」
そう言うと、セレンはスィベル侍祭の執務室へ歩いていきました。そしてすぐに、彼女はスィベル侍祭をそのまま連れてきました。スィベル侍祭は私に向かって口を開きます。
- 「
- エミーネ、あなた自分の立場が分かってないでしょ?」
- 「
- 立場って?」
- 「
- あなたは病気が治ったらルナー当局に出頭しなければならないの。病人が表で労務なんかできないでしょ?」
- 「
- あぁ、せやった。」
- 「
- そういうわけだから、病人は部屋で寝てなさい。」
- 「
- せやけど、あて、じっとしてとぅないんどす。」
- 「
- まったく、働き者ねぇ。」
- 「
- そうやのぅて、不安なんどす。」
- 「
- ふむ、よろしい。エミーネ、あなたにはフィリシアさんの看護を命じます。」
- 「
- 看護?」
- 「
- まずは身体を拭いておあげなさい。おっとその前に、あなたにも入浴の許可を与えます。あなた、昨晩は顔しか拭いてないでしょう? 顔の縁が旅塵で黒いままよ。」
- 「
- えへ。労務の後にみんなで水浴びすればいいかなって。」
- 「
- 看護人は清潔が第一。薬局(10)から石鹸(11)を出させますから、それで耳の裏まで綺麗になさい。」
- 「
- わ、ありがとうございます。」
火山地帯にあるエスロリアでは、貴族は温泉を自らの邸内に引き、富裕な市民も各自の家に浴槽を持ち、貧民ですら湯屋に通いますが、ここパヴィスでは温浴はまったく一般的ではありません。この寺院でも、蒸し風呂と冷たい水の浴槽があるだけです。浴場の入り口には脱衣場があり、ここで服を脱いで手ぬぐいだけを持って、備え付けの下駄を履き、浴場に入ります。脱衣場にはスィベル侍祭が用意してくれた石鹸が置いてありました。浴場は、脱衣場も入れて三部屋が続いた構造になっており、脱衣場から入ると次は水浴の間です。浴槽の周りには石のベッドがいくつかあって、蒸し風呂から上がると、ここでおしゃべりしたり、身体を拭いたり、仲間同士でマッサージしたり、毛抜きをしたりします。そして水浴の間を抜けると、蒸し風呂の間になります。こちらにあるのは石のベンチで、汚れた体液を出し切るまでここに座ります。出し切る前にふらふらしてきたら、水浴の間に戻って水に浸かり、もう一度ここに座るのです。今日は何と、この広い浴場を独り占めです。一人なので、蒸し風呂で我慢比べ、などという不毛なことをしないでも済みます。私はいったん蒸し風呂に入って肌をふやかしてから、水浴の間で身体を石鹸を使って綺麗にすると、心いくまで蒸し風呂と水浴を往復しました。このように自由に楽しめるなら、蒸し風呂も温浴に比べてそう悪いものではありません。でも、一人で入るとマッサージを楽しめないのが残念と言えば残念です。毛抜きは、ここパヴィスでもエスロリアと同じく松脂の塊を使います。私がさんざん蒸し風呂に入ったのも、楽しみのためばかりでなく、少しでも毛穴を広げておこうとの心積もりからでしたが、さすがに十日以上も怠っているとかなり辛いものがありました。最後にもう一度、石鹸で身体を洗い、身体に石鹸の椰子の香り(12)をまとって、私は浴場を出ました。
続いて、私はお湯を満たしたたらいと清潔な布を持って、フィリシアが寝かされている部屋を訪れました。フィリシアは相変わらず、目を閉じたまま、静かな呼吸音だけを立てて眠っていました。眠っていた、というのは語弊があるかもしれません。血の気がなく、息をしていなかったなら、まるで死人です。刹那、私は自分もこんな生きているか死んでいるか分からない、哀れな状態になるのでは、と寒気を伴う想像が沸き起こりました。いいえ、いいえ。私は首を振ります。彼女はただの病気。生きていて、魂も穢れていない。私が、癒し手が彼女の回復をあきらめ、己の身のみを案じていてどうするのです。私は彼女が普通の病人であるかのように彼女に話しかけることにしました。
- 「
- フィリシア、具合はどない? あんたの身体、拭きに来たったで。」
もちろん返事はありません。
- 「
- 今日は風が穏やかやから、窓、開けるで。」
パヴィスの建物の窓は、エスロリアの田舎のそれのように格子窓で、内側から板の蓋をはめることで窓を閉めます。私はそれをはずしました。すでに暖められた空気が部屋の中に忍び込んできます。
- 「
- さてと、覚悟はええか? フィリシアちゃん。」
まず、布の綺麗なうちに顔を拭きました。予想通り、唇が乾燥してひび割れているので、持ってきた油を指でとって塗ります。耳の裏にも塗っておきましょう。一回ゆすいで、今度は汗をかきやすい首、腋を拭きます。そして、今度は紐を解いて衣の前をはだけさせます。旅を続けているという割には綺麗な肌で、正直感心しました。胸や腹を拭きながら、その弾力にも感心します。
- 「
- あなたの立ち姿はなつめやし、乳房はその実の房。
- なつめやしの木に登り、甘い実の房を掴んでみたい(13)、か。
- でも、なつめやしに取り掛かりの枝はないんよね。勿体ない。」
そして、次は先に足を拭いてしまいます。足首を持ち上げて見ると、足の爪が割れて内出血を起こしていました。それはそうでしょう、彼女は自分の意思ではなく3日間も歩き続けてきたのですから。脛にもぶつけたあざが散見されます。足首にはなにか、アンクレットと呼ぶには余りに無粋な足輪がありました。これの周りにもあざがついていましたが、はずすことはできませんでした。私は、彼女の足を指の股まで丁寧に拭きました。最後に、腰布を解きズボンを引き下ろします。予想通りすえた匂いがしました。でもここが肝心。古い下着を解いて丸めてしまうと、まずいままで使ってた布でお尻を一拭きしてしまい、新しい布を取って、下腹部から腿にかけて丹念に拭きました。汚れがこびりつかないよう、すでに剃毛は昨夜なされていたようなので、それはやらずに済みました。もっとも、自分がやっていたらずいぶん傷を負わせていたでしょうが。さて、身体を拭くのはこれでお仕舞い。あとはシーツを換えなければいけません。でも、あの脛のあざを見たあとでは、彼女を立たせるのは酷に思われました。そこで、彼女と布団の間にあるシーツを抜き取ってしまえば、とひらめき、そうしました。
- 「
- いっせーの、せ!」
私がシーツを引っ張ると、坂になったシーツの上を素裸のフィリシアはごろごろ転がっていき、壁に頭をぶつけました。
- 「
- う…、ま、まぁ」
まあ、新しいシーツを敷くならどうせフィリシアにはどいてもらわざるを得なかったのです。新しいシーツを敷いて、私はフィリシアを布団の上まで再び転がしました。さてと、服を着せてあとは終わりなんですが、どうせ午睡まですることもありません。私は彼女の腰に掛け布団である綿布をかけると、彼女の頭の方であぐらをかき、彼女の頭を乗せて、彼女の髪を櫛で梳いてやることにしました。彼女を裸のままにしておいたのは、普段は服に覆われている部分に何らかの変化があっても見つけられる、という医者の判断もあったのですが、窓から漏れる光に照らされた彼女の裸体が美しい、と思ってそうしておいたのも事実です。
昼過ぎ、寺院のみんなが帰ってきたようでした。みんなはこれから水浴で汗を落とし、午睡して、そのあとでお茶です。ですが私はそれに参加できないようでした。フィリシアの部屋にセレンが来て、私に言づてしたのです。
- 「
- エミーネ、起きなさい。大女祭補様がお呼びよ。」
うわ、私はフィリシアの髪を梳きながら居眠りしていたようです。フィリシアを裸のままにしておいたのはまずかった、と思いましたが、見れば、綿布は彼女の身体をすっかり覆い、肩のところで留められていました。どうしたのでしょう? 彼女が起きて自分でやった? ともあれ、私は涎をぬぐって復命しました。
- 「
- はい、大女祭補様のところへ伺います。」
フィリシアの頭をそっと枕の上に置くと、私は大女祭補様の執務室へ伺いました。
- 「
- 大女祭補様、お呼びと伺いましたが。」
- 「
- えぇ、呼びましたよ。午睡を邪魔して申し訳ないけれど、あなたはもう十分休息したからかまわないでしょう?」
- 「
- 休息って、まさか…?」
- 「
- えぇ、一刻ほど前に私、自分で呼びに行ったんですけど、あなたが余りにも気持ち良さそうでしたから。でも、お友達、あれじゃあ風邪を引かせてしまいますわね。」
- 「
- も、申し訳ありません。」
- 「
- そうねぇ、私に謝られても仕方ないのだけれど、彼女に謝ってもいまは意味がないし。じゃ、あなたも裸体をさらす、ということで。」
- 「
- だ、大女祭補様…。」
- 「
- 冗談ですよ。でも、この寺院はパヴィスの往来に面していて、好き者どもが隙あらばと中を覗いているんだから、あなたも冗談は程ほどにね。」
- 「
- はい、もう致しません。」
- 「
- よろしい。さて、あなたを呼びつけた理由なんですが、あなたの同部屋の方々から不満が出ています。あなたが夜に騒々しい、と。」
- 「
- そうなんですか?」
- 「
- うーん、やっぱり意識的ではないみたいね。あなた、一晩中呻いたり喚いたりしていたそうよ。あなたとフィリシアさん、状態は違うけど、2人とも同じ状況に遭遇して同じくおかしくなったのだとしたら、あなたはいま過渡的な状態にあって、あなたもいずれフィリシアさんのようになるだろう、と私たちは見ているのだけれど。」
- 「
- それは、それはあてもそう思います。」
- 「
- でもね、昨晩はフィリシアさんを調べたのだけれど、いまいち原因が分からないのよ。混沌も精霊も検出できなかったし。それであなたに事情を聞こうと思ったのだけれど。できそう?」
- 「
- 分かりません。あのときのことを思い出そうとすると、うっ!」
- 「
- だ、大丈夫?」
- 「
- ま、まだ…。思い出そうとすると、身体がだるくなってきて、頭が真っ白になって、何も分からなくなるんです。」
- 「
- やめとく?」
- 「
- いえ、いいえ。このままやと、あても何も喋れなくなってしまいかねません。できるうちにできることをしとかんと。ちょっと、頑張ってみます。う…、うぐ、ぐぐっ…。」
- 「
- しっかり!」
- 「
- ぐぬぬぬぬ…、うわぁー!」
その後、私は大女祭補様の書見台をひっくり返して、大女祭補様に傷を負わせたそうです。私は気付くと、フィリシアの部屋で彼女の横に寝かされていました。そして私は暴れないようにでしょう、手首と足首を縛られていました。
- 負い目
私が手首を縛る紐を歯で噛んで解こうとしていると、扉が開き、大女祭補が入ってきました。
- 「
- どう? 落ち着いた?」
- 「
- あて、何でこんなところに縛られて転がされてるんですか?」
- 「
- あなたはねぇ、あのあと暴れて、ほら見て、この傷。」
見ると、大女祭補の額には包帯が巻いてありました。
- 「
- それ、ひょっとして?」
- 「
- そう、あなたがやったのよ。」
- 「
- ひぇーっ、申し訳ございません。」
- 「
- ま、わざとじゃないんだから怒ってはいないけど、あなたを自由にしておくのもねぇ…。あの書見台、アルダチュール製の逸品だったんだけど。そんなわけで、またあなたに話を聞くんだけど、手は縛ったままでいいよね。」
- 「
- はい、構いません。」
大女祭補は私の足首を縛る紐を解き、私を立たせると、再び彼女の執務室へと私を連れて行きました。
- 「
- あなたたちの身柄に関して、あの組織から督促状がきてるんだけど。」
- 「
- あの組織? あぁ、赤くない方ですね。」
- 「
- そう、その赤くない方の組織から、あなたとフィリシアさんを引き渡してほしいって。信用ないわね、うち。」
- 「
- それで、どない答えはったんどす?」
- 「
- 保留中よ。医学的に言って、とくにフィリシアさんを安静にできないようなところに送るのは感心できないけど、あちらさんが落ち着かないのも分かるわね。心神喪失者が2人も組織の外にいるんだもの。というわけで、答えはあなた方の、まあ実質的にあなたの考え次第で決めようと思ってるわけ。」
- 「
- あての考え…、どすか? 治療法が分からないうちは、その…、安静にしていた方がいいと思います。でも! そう、じっともしていられないんどす。」
- 「
- そうね。あなたまでフィリシアさんのようにならないうちに治療法を突き止めないとね。」
私は自分の耳朶が熱くなるのを感じました。
- 「
- あの…、見抜いてはったんどすか?」
- 「
- 見抜く? 何を?」
- 「
- その、あてがフィリシアみたいになりたくない、って思っとったのを。」
- 「
- 見抜くも何も。当然じゃない?」
- 「
- 当然って…。フィリシアは、ともかくも、あてを助けてああなったんどす。せやのにあて、自分だけ助かったのを喜んで…。」
- 「
- ふぅん、なるほどね、あなたが負い目を感じる気持ちも分からないでもないわ。でも、あなただって楽してるわけじゃないじゃない。思わず机をひっくり返しちゃうくらい嫌な記憶と向き合って、治療法を見つけ出そうとしているんでしょ? それに、もしあなたまでダメになってたら、フィリシアさんの努力は無意味なものになっていただろうし、助けられる見込みもなかったと思うわ。もし負い目を感じているなら、あなたが生きて、自分とフィリシアさんを治して、二人で笑う、これが彼女の負債に報いる正しい道だと思うんだけど。」
- 「
- あてが…、生きる。」
- 「
- そう。それにせっかくあなたは最近、生きる喜びを見つけたんでしょ?」
- 「
- そ、それは…。」
- 「
- そうそう、その生きる喜びの君、さっきここに来たわね。」
- 「
- え? アルヨンはん? 何か言うてはりました?」
- 「
- あなたとフィリシアさんに会いたい、ってことだったんだけど、もう旅立ったって嘘ついて、追い返しちゃった。」
- 「
- は?」
- 「
- だってあのとき、あなた縛られながらもキーキー金切り声上げて暴れてたのよ。それでも会わせたほうがよかった?」
- 「
- そ、それは…、ちょっと…。」
- 「
- それに、彼、尾行されてたし。」
- 「
- 尾行? 誰に?」
- 「
- さぁ? 前の彼女じゃない?」
- 「
- はいはい。当局の手の者どすか?」
- 「
- 多分ね。勘違いかもしれないけれど、用心にしくはないわ。大丈夫よ、私がとっさについた嘘、まぁ当然だけど、彼、信じてなかったみたいだわ。折を見て、事情を伝えましょう。」
- 「
- はい、お願いします。お願いついでにもう一つ、」
- 「
- 何かしら?」
- 「
- あてやフィリシアのような症状に陥った者の伝承や記録が過去になかったか、調べられませんか? 大ばばさまやお向かいのランカー・マイの学者さまに聞いて。」
- 「
- う~ん、じゃ、晩餐のあとに会合を持ちましょうか。でも、大ばばさまや学者さまを呼ぶのはいいけど、あなた、晩餐までに心を落ち着けておきなさいよ。人を集めておいて証言できませんでした、なんていうのは困るんだけど、もっと困るのがあなたがまた暴れること。机なんかぶつけたら、大ばばさま、死んでしまうわ。」
- 「
- はい。あてはもう睡眠はとったので、午睡の時間はお香を焚いて瞑想し、夜に備えたいと思います。」
- 「
- それがいいわね。部屋を用意するわ。」
- 「
- お願いします。」
私は大女祭補の執務室を辞すと、薬局に行って香炉を借り、大女祭補にあてがわれた部屋にこもってお香を焚いて、晩?まで瞑想にふけりました。
- 賢者たちの推察
晩?の後、晩餐の手伝いをし、普段のように大広間での晩餐が終わると、大広間からテーブルがどかされ、壁に沿って椅子を並べて、空いた空間にフィリシアが担架で運ばれてきて寝かされました。こうして、私とフィリシアの治療法を諮るための会合の準備はなされました。そして、準備が終わったのを見計らったように、大広間にランカー・マイの学者が入ってきました。外部の客を迎えるために同席していた大女祭が彼を立って迎えます。
- 「
- よくいらしてくれたわ、ティルダード。」
- 「
- 面白いものを見せてくれる、と言うでな。」
- 「
- まぁ、相変わらず憎たらしい。この女の園へ入ってみたい、と思っている男たちがどれだけいると思って?」
- 「
- 奴らは事象の表面しか見ぬ愚か者どもだからな。わしは、そなたら女の内容物よりも、事象の内容を愛するのだ。」
- 「
- あら、わたしは話の内容だってあなたの愛する本に負けないくらい豊かなのよ。」
- 「
- それは、魅力的な誘いだな。内容も、か。だが後日のことにしようぞ。で、わしがこれまで見たこともない標本とはどこにあるのだ?」
- 「
- あなたの足元よ。」
- 「
- おおっと。危なく踏むところだった。この寝ている娘か? どれ…、ああ、明かりをもってきてくれ。」
信者の一人が燭台をもってきて、ティルダードに手渡します。
- 「
- これではダメだ。熱で眼を焼く。おい、シャフルナーズ、けちけちせずに《ランタン》の松明を持ってこさせろ。」
みんながざわめきます。シャフルナーズって誰だ? と。
- 「
- スィベル、宝物庫に行って《ランタン》の松明をもってきなさい。」
- 「
- おい、シャフルナーズ、こいつらはお前の過去の栄光を知らんのか?(14)」
- 「
- 過去だなんて。わたしは今でも街に愛されているからいいんですよ。神様は、あなたと一緒で、わたしの中身を嘉してくださったのですから。」
- 「
- なるほど。」
- 「
- で、明かりで何をなさるのです?」
- 「
- うむ、こやつの外界に対する反応を見ようと思ってな。瞳孔反応が一番明敏だから…、と、おい、そこの羽箒を取ってくれ。他の反応も見ておこう。」
ティルダードは羽箒を受け取ると、それでフィリシアの身体を撫で始めました。見ていてこっちがくすぐったくなるほど綿密に。
- 「
- やはり、反応はないか。お、《ランタン》が来たな。」
彼は今度はフィリシアの眼を左手でこじ開け、右手で《ランタン》の松明をかざします。そして、フィリシアの目をひとしきり観察したあと、ため息をついて首を横に振りました。
- 「
- 瞳孔反応もない。おそらく、何ぞ嫌なことから目を背けるために身体が外界との接触を内から一切遮断したもの、と踏んではおったが、ここまでひどいのは、なるほど見たことがない。」
- 「
- で、治せそう?」
- 「
- だから、見たことがない、と言っただろう? 過去にわしの知る症例はない。したがって、治療法も知らぬ。ただ…、」
- 「
- ただ、何?」
- 「
- ただな、この者は恐怖から心を閉ざしておると言っておったな。その手の治療に詳しい者が、アルダチュールにおるらしい。」
- 「
- アルダチュールに?」
- 「
- わしも風聞で聞くのみじゃが、若いのに大した腕らしい。なるほど、このような世界の果てにまで評判が聞こえるだから、そうなのだろう。それともう一つ、この者の足に付けているものなのじゃが、これは“アーナルダの頸木”ではないか? この御神宝がこの者の状態がこれほどでありながらよく命を保たせておるのではないかな。」
- 「
- “頸木”って首に架けるものではないの?」
- 「
- うむ、確かにそうじゃが、こやつが誤って付けたか、それとも足に架けるものは“足軛”というのじゃが、これがごろが悪いので改められたかしたのじゃろう。もっとも、そんなつまらんことを気にかけているのはお主だけのようだ。ほれ、」
みんなはフィリシアの足輪がどうやらありがたい御神宝らしいものであると分かった瞬間にどよめき、そして、かの足輪に近づき、次々に触りました。拝む者までいます。
- 「
- では、小娘たちには“アーナルダの頸木”をやるとして、わしはもう一つの標本を見せてもらおうか。」
- 「
- はいはい。エミーネ、立ちなさい。」
大女祭に命じられて、私は立ち上がりました。ティルダードは顎髭をしごきながら私を眺め回します。
- 「
- ほうほう、ぬしゃエスロリア人か。あっちもずいぶん大変な目にあったようだが、それで逃げてきたのか?」
- 「
- はぁ、まぁ。」
- 「
- ぬしぁ、“頸木”は持っておらんのか?」
- 「
- はい、残念ながら。」
- 「
- 奪えばよかったろうに。」
- 「
- 女神が彼女を選ばれはったんどす、残念ながら。」
- 「
- そうか、まことに残念であったな。」
わたしは、あの足輪が“アーナルダの頸木”であることをいま知ったばかりだし、それがどういう効験があるかも知らないのですが、みんながあれほど有難がっているものを知らないのは恥ずかしく重い、知ってるふりを通しました。でも、これだけは分かりました。あの足輪のないわたしの自己崩壊はとどめようがない、ということは。
- 「
- おい、目隠しに都合のいい布を持ってきて、この娘に目隠しをしろ。」
信者の一人が私に布を渡し、私は自分で目隠しをしました。
- 「
- おい、ぬしゃ、身体のどこがくすぐったいね?」
- 「
- は? まぁ、首筋とか…、かな。」
- 「
- なんだはっきりせんな。今度彼氏によく探してもらえ。まぁ、およその見当でいこう。で、腕なんかはあまりくすぐったくはないよな。見たところ、ぬしゃ農家の娘であろう。麦刈りなんぞしとると、肌が強くなるからな。」
- 「
- はい。」
- 「
- うむ。なら…、どうだ?」
- 「
- どうだって、何がどす?」
- 「
- よい。なら、これはどうだ?」
- 「
- 何か触れました?」
- 「
- よい。これは?」
- 「
- むずむずします。」
- 「
- よろしい。目隠しをとってもいいぞ。いま、ぬしの身体をこの羽箒で撫でておった。どうだ? 想像するだけでくすぐったそうだろ? だが実際は?」
- 「
- 全然くすぐったくなかったです。」
- 「
- そのようだな。そなたの感覚も閉ざされつつある、ということだ。たまに自分でやってみて、感覚の強弱を覚えておくがよい。感覚が弱まっていけば、そなたの心も閉ざされつつある、ということだ。」
- 「
- そんな…!」
- 「
- それと、無論元気になったらだが、彼氏には首筋より耳の裏を可愛がってもらえ。もっともそれは、そなたにも自覚があったであろう?」
- 「
- 耳の裏の方が、って…?」
- 「
- そちらも自覚があったのか。」
- 「
- いや、犬みたいでちょっと恥ずかしいかなって。」
- 「
- うむ、だが犬の行動から学ぶこともまた多いのだぞ。それはともかく、感覚が弱まっている、ということだ。触覚だけでなく、味覚とか嗅覚とか、五感のすべてだ。」
- 「
- ええ、あては疲れているからなんやないかと思うとったんどすが。」
- 「
- 疲れと思っていたなら、それでもいい。どんなときに疲れを実感した?」
- 「
- ここのところ毎晩なんどすけど、悪夢を見て目覚めたとき。それと、あのときのことを意識的に思い出そうとしたときどす。」
- 「
- うむ、同じ結果が得られることから推測するに、ぬしゃ眠ることで、意識的にぬしの恐怖に接近するときと同じように、無意識的下でも恐怖に接近しておるのだな。ぬしゃ、もはや寝ぬ方がよいぞ。」
- 「
- そんな無茶な!」
- 「
- 無茶ではない。アルダチュールに着くまででよいのだ。かの地まで、ここより100里弱(15)、馬車なら二週間足らずで着く。」
- 「
- そんなに保つか、自信あらへんどす。」
- 「
- ま、保たなかったら保たないで、仕方あるまい。ここにいても治りはせぬのだ。ふぅむ、一つのぬしの悩みを解いてやろう。ぬしゃ、ここに寝ている娘を惨めだと思い、また自分もそうなったら惨めだと思うがゆえに、焦るのであろう。だが、先にも言ったように、ぬしゃ無意識下でも恐怖の源である何かに近づいていっておる。それがなんだかは分からぬが、ぬしゃそれを本当は求めておるのかも知れぬぞ。」
- 「
- 恐怖を喜ぶなんてこと、あらはりますか?」
- 「
- まずは用語に気をつけようぞ。それが表層どおり本質まで恐怖とは限らぬ。ぬしの恐怖の源である何か、じゃな。つまり、ぬしゃその恐怖の向こう側にある本質の方に心惹かれておるのかも知れぬ、ということじゃ。ま、恐怖を喜ぶ、というのもなくはない。」
- 「
- じゃあ、どんな本質があると予想してはるんどすか? そういう仮定をするからには、何らかの心当たりがあるのと違いますか?」
- 「
- 鋭いな。ま、孤独だとか虚無というのはありがちじゃな、と思うてな。わしらはみな、愛とはすばらしい、人を愛し人から愛されることは無上の喜びじゃ、と信じておる。じゃが、本当は水中を泳げなかったり木に登れなかったりするのと同様、まったく人を愛せない、愛するの能力が欠如したままで生まれてくる者は多い。じゃが、世間が愛を無上のものと信じ、また愛無き者を価値の低い人間とみなすゆえ、自らをそうだとは認めず、自らを騙し、愛を喜ぶ振りをして窮屈な思いをしている者のなんと多いことか。無論、人を愛せないよりは愛せた方が良いには違いない。木に登れないよりは登れた方が良いのと同じように。じゃが、木に登れなければ梯子を使えばよい。同様に、人を愛せなくとも誰かにとって必要な存在であることはできるし、愛欲の悦びも味わえる。ただ、木登りができないことは隠す必要がないのに、人を愛せないことは他人だけでなく自分をも騙さなければならないところが辛いところじゃ。」
- 「
- あてには人を愛する能力がない、そう見てはる?」
- 「
- いや、これは例としてあげただけじゃよ。ぬしの恐怖の源である何かが何であるか、はわしは知らぬ。」
- 「
- でもそんな例を出すからには、そう見える、と…。」
- 「
- いやいや、浮気性だとか自分の子供を虐待するだとか、そういう目に見える振る舞いがあるならそうじゃが、大概の愛無き者たちは、死ぬ間際になってようやく自分がそうであることをしぶしぶ認め、自分と連れ合い、そして子供たちと親たちを欺いてきたことを悔いるらしいな。」
- 「
- またまた、見てきたように。」
- 「
- いや、見えるんじゃよ。生前の自分の振る舞いを悔いて、ぶつぶつ文句を言って定命界にとどまる霊たちがな。もしそこに寝ている娘が孤独を愛する、愛無き者であるならば、いっそこの状態はそのような者にとって理想の状態であるかも知れぬ。どうじゃ? そう考えると恐怖に陥ることもまんざらではあるまい。少しは気が楽になったか?」
- 「
- いや、考え事が一つ増えたような…。」
- 「
- ティルダード、御高説はそのあたりにしておいたら? 大ばばさまが眠ってしまうわ。それと、愛に関しては、心の動きを頭で追って分かった気になっていると、かえってよくないことを引き起こす、というのが私の意見ね。大ばばさま?」
大女祭が呼ぶと、まるで壁の一部が動いたように、今まで息の音さえさせなかった大ばばがゆっくりと光のある方へ進みだしてきました。
- 「
- ようやく終わったかい? はん、洟垂れ小僧が愛についてお説教か? 人を愛する能力が欠如した者、か。もてない臆病者の考えそうなことだねぇ。エミーネとやら、真に受けると損するよ。」
- 「
- 何を? わしは…」
- 「
- 文句があるなら、この婆より長生きしてからにしておくれ。さてと、この婆が教えてやれるのは歌だけだが、一つ聴いてもらおうか。これはシュロクエというわたしのさらに婆さんの時代の英雄の武勇譚の一節だ。
- 長旅の 果てにシュロクエ 愛馬を見れば やあやあお前も疲れたか わしも疲労困憊じゃ
- どこぞに村は無いものか 辺りを見回し風に問えば 一駆け先にテントが見ゆる やあやあこれは天佑ぞ
- シュロクエ愛馬を励まして その集落に分け入れば 人影見えず 煙も立たず やあやあこれは怪しいことぞ
- 村をくまなく探してみると 少しはなれたところにぽつり ぽつりと人が倒れてる
- 見れば眼窩や口中に 蛆虫わいて蠢いている なるほどこれは大方やはり群盗どもに襲われた 哀れな民の果てならんや
- そう思したシュロクエは せめて金目のものは無いものか と哀れな死者の胸倉を 探ってみるとびっくり仰天
- 心臓の鼓動とくとく とくとくと指を通して 伝わってくる さてこそこれは魂を 抜かれたものと 覚えるや
- 再び立ってこの辺り 見渡しみれば 熟れ麦が 風に圧されてあるように 頭を右に 向けている
- そのまま視線を辿っていくと 山のような黒雲が 大地に渦を巻いている
- こいつはいけない 一大事 シュロクエ 愛馬を差し招き 一目散に逃げ出した…」
- 「
- シュロクエさんって方、逃げたんですか? 英雄なのに。」
- 「
- そりゃそうだよ。勝てない相手に向かってく正直者は、いさおしを挙げる前に死んじまう。ま、聞いて欲しかったのは、砂漠にゃ英雄でも太刀打ちできない、とんでもないものがうようよしてるってことさね。ま、このエミーネとやらがこんなのに出会っていたとしたら、生きて帰っちゃいないだろうがね。なぁ、お嬢ちゃん。」
大女祭はわたしが肯くことを期待してこちらを向いたのでしょう。ですが、わたしは先の話で、「あれ」が現実であることを思い知り、恐怖に震えていました。
- 「
- ビンゴ、だったかね?」
- 「
- 何を悠長な。大女祭さま、その黒雲の瘴気にあたって、かつ生還した者の治療法はご存じないですか?」
- 「
- いんや、そもそも黒雲に遭遇して生還したのはシュロクエ様だけだ。そんな方法知るわけないわい。」
- 「
- そんな…。」
- 「
- 何を大げさな。この娘はこうして生きて帰ったんだ。程度の差こそあろうが、若武者が初めて敵首を取ったときのようなもんで、酒でも飲んで寝ちまえばいいのさ。もっとも、この娘にもう酒はいらないみたいだね。寝所につれてっておやりよ。あたしももう寝る。」
- 「
- うぅむ、すると、この娘がその件の“黒雲”とやらに間近に会って、初めて生還した者となるのじゃな? うぅむ、実に興味深い…。」
- 「
- …ティルダード様も、もうお帰りくださいませ。」
- 「
- む、招いておいて何たる失礼。わしはこの貴重な被験体をだな…、こら、はなせ! うわっ、腕が折れる。か細い老人に何てことを…」
- 再びパヴィスを出る
いつの間にか寝台に収まっていたわたしは、ひどい臭いで目が覚めました。これは…、料理が失敗したときの臭い? ちょっと違う。その臭いは残念な気持ちと一緒のものだけれど、この臭いは悲しい気持ちと一緒に嗅いだような気がする。
あれはわたしが10歳のとき、ノチェットでのことでした。その年、西の方から荒くれども(16)がやってきて村を荒らすので、お父さんもすでにない我が家は、家畜を売ってノチェットに逃れてきたのでした。どこを向いても人ばかり、きっと今日はお祭りなんだと思っていたら、本当に人だかりができているので覗きに行ってみると、そこでは、柱に括り付けられた男たちが火炙りにされていました。脇に立つ女祭が、穢れた魂が火によりて浄化されんことを、と祈っていました。ああ、この臭いは穢れた魂が燻る臭いでした。
とにかく窓を開けようと、わたしは窓板をはずしました。ここパヴィスでは、冬にはかなり冷え込むので、エスロリアのものと違って窓が密閉できるようにぴったりと板をはめ込みます。その板は、わたしたちの風呂蓋のようなものです。明け放たれた窓からは、砂漠からの清涼な風が部屋に流れ込んできました。が、臭いはかえって強くなりました。いぶかしみつつ窓を閉め、臭いがどこから発するか部屋を探し回りますが、臭いはついて来ます。その嫌な事実を認めたくないために、わたしはさらに部屋をうろつきましたが、ダメでした。臭いはわたしから、燻るわたしの穢れた魂から発しているのでした。死よりもなお恐ろしい結末がわたしを待っている気がして、この夜はひざを抱えたままとうとう眠れませんでした。
日の出直前、寺院住まいの姉妹たちが起き出したらしく、物音が聞こえ始めます。わたしはまどろんでいたのですが、ノックの音がそれを覚ましました。
- 「
- エミーネ、起きてる?」
- 「
- あ、大女祭補さま、はい、いま開けます。どうしはりました? まだ夜も明けぬうちから。」
- 「
- うん、昨夜、あなたは気を失ってしまったじゃない。だから、昨夜の話を覚えてるかしら、と思って。灰色卿(17)はアルダチュールに治療に行ってみてはどうか、って。で、大ばばさまは一時的なもので気に病むことはない、って。」
- 「
- はい、よぅ覚えてます。」
- 「
- で、どうするの?」
- 「
- 学者さまの話だと、ここにいたら救われないんですよね。大ばばさまの話だと、アルダチュールに行ってる間にも治るかもしれん。ほなら、アルダチュール行きの方が安全と違いますか?」
- 「
- うん、普通そう判断するわよね。」
- 「
- 何か問題が?」
- 「
- ほら、あなた、赤い方々に言い寄られてるんでしょ?」
- 「
- あ、しもうた。」
- 「
- そう思って、ほらぁ。」
言うや、大女祭補は後ろ手に隠していた布を広げました。
- 「
- これは?」
- 「
- 変装よ。ほら、あなたって見るからにエスロリアから来ました、って格好しているでしょ?」
- 「
- いや、これはヒョルトランドの…。」
- 「
- とにかく、パヴィスの普通の娘になるのよ。」
- 「
- さすがにそれだけでは…。」
- 「
- もちろんそれだけじゃないわ。うちと懇意にしている交易商に、あなたを隠して運んでもらうつもり。さらに、開門のとき、門の外で待たされてた人たちが入ってくる混雑時にあなた方に出てもらうつもりよ。」
- 「
- 完璧ですね。」
- 「
- うぅん、完璧ではないの。」
- 「
- というと?」
- 「
- 朝早く出て行くとなると、あなたの恋人に別れの挨拶ができそうにないわ。」
- 「
- あ…。で、でも仕方ないどす。」
- 「
- 手紙でも、書いてみる? 今日の昼までには届けるわよ。」
- 「
- あ、ありがとうございます。そなら、さっそく準備に取り掛かります。」
- 「
- 朝ごはんも食べるのよ。じゃ、またね。」
わたしは荷造りをし、手早く早課を済ませ、文机の前に座りました。朝食までの間にアルヨンへの手紙を書くためです。
手紙…。何を書こう? 愛しい愛しいアルヨンさま? アルヨンとわたしの関係は、わたしが一方的に恋焦がれているだけで、彼の気持ちをまだ確かめていない。こんな大切なこと、この頼りない紙切れには託せない。でも、治療に何ヶ月もかかって、ここに戻ってきて彼がいなかったらどうしよう? 思ったより難しい。考えているうちに朝食の準備が整ってしまったようでした。
朝食のテーブルに着いてからもなお、手紙のことを考えていると、可愛らしい少女がわたしの目の前の席に座り込んできました。
- 「
- お早うはん、えぇと、どちらはん?」
- 「
- あ、そのエスロリア訛り、やっぱりあなたがエミーネさんですね。アルヨンさんが気にかけてる。」
- 「
- え? あ、あの…、嫌やわぁ、朝からそないな、って。そう、あてはエミーネどす。あなたは?」
- 「
- あ、ごめんなさい。あたし、ナノっていいます。この席、空いてます?」
- 「
- もう、座っとるんやけど。まぁ、ええわ。ところで、ナノさん? さっきアルヨンって…」
- 「
- 冬の朝食って、朝から豚肉てんこ盛りで、困っちゃいますよねー?」
- 「
- まぁ、今のうちはまだ茸とかが残ってるから…って。」
- 「
- えぇ、“彼”に、食事に誘われたんですよ。」
- 「
- な、何やて?」
- 「
- えぇ!? あたし、まだ平信徒なんだし、いいじゃないですかぁー。先輩たちも遊ぶなら今のうち、って言ってますよー。」
- 「
- いや、そうでのぅて。」
- 「
- ああ! 大丈夫ですよ。あたし、よく男の人に声、かけられてるんで、慣れてるんです。そんなの。」
- 「
- 人の話を聞きなはれ!」
- 「
- …はぁい、どうぞ。」
- 「
- あてのこと、聞いてからにここに座ってはるんでしょ? “彼”から。」
- 「
- …そうです。これから言おうとしてたのに…。」
- 「
- 堪忍ね。怒鳴るつもりはなかったんやけど…、つい。」
- 「
- はい、もういいです。で、“彼”…、」
- 「
- そう、“彼”が?」
- 「
- い、いや、アルヨンさんがですね、エミーネさんのこと心配して、ここを見張ってたんですって。でも、もちろん寺院は取り合ってくれないじゃないですか、知らない男の人なんだし。で、事情を聞きだそうと、たまたまあたしに声をかけたんですよ。」
- 「
- そう、アルヨン、ずっと心配してくれはったんやろか…。」
- 「
- で、その後、アルヨンさん、あたしのことを部屋に連れ込んだんですが…。」
- 「
- はぁ?」
- 「
- 違います違います。あたしもね、嘘こいて悪戯しようとしてたんなら、蹴ってやろう、って思ってたんですけどね。本当に指も出さないんで、悔しいから胸を押し付けてみたんだけど。アハハハ…」
- 「
- ハハハ…。」
- 「
- …嘘です。ごめんなさい。」
- 「
- どこまで?」
- 「
- も、もう、何を言ってるんですか。アルヨンさんはエミーネさんに岡惚れですよぉ。エミーネさんも、恋人は信じてあげなくっちゃ…、どう?」
- 「
- う~ん、うむうむ。」
- 「
- (こっ、これだわ!) ねぇ、エミーネさんとアルヨンさんは愛し合っているんだから…。 (今のうち、抜き足、差し足…)」
- 「
- はっ! ところでナノはん…、っていない?」
見ると眼前には食べかけの朝食が二膳あるだけでした。
- 「
- あっ! 急いで仕度せな。」
わたしは部屋に戻ると手早く手紙を書き、すでに準備が整った荷物を持って大女祭補の下へ赴きます。
- 「
- 準備できた? 恋人への手紙は書けたかしら?」
- 「
- はい。」
- 「
- どれどれ、本日早朝、治療のためアルダチュールに発つ、エミーネ。え? これだけ?」
- 「
- これだけです。書置きなんやから十分どす。」
- 「
- うぅん、あふれる想いがかえって邪魔をして、何も書けなかったのね?」
- 「
- そんなところどす。」
- 「
- じゃ、これは間違いなく届けるわ。交易商さんは、門前ですでにお待ちよ。マスターコスの僕の方で、ブントさんっていうの。ちょっと馬車に問題がないわけじゃないんだけど…。」
- 「
- そないなこと言ってられまへん。ほんま、お手数かけます。」
- 「
- 何、言ってんの。姉妹じゃない。気を付けてね。」
- 「
- はい、姉さんも、元気で。」
荷物を担ぎ、フィリシアの手を引いて扉を開くと、そこには古ぼけた四輪馬車が止まっており、御者台では浅黒い男がやけに白い歯を朝日に輝かせてわたしたちを迎えてくれました。
-
七母神の一柱。赤の女神の純潔と慈悲の顕現。帝国組織では厚生救貧を担っている。
-
風の民の商いの神。カルト自体が手広く交易事業に携わっており、寺院では為替も扱う。
-
アーナールダ寺院で先輩を呼ぶ敬称。エミーネはパヴィスのアーナールダ寺院では新顔なので、ほとんどの同僚が「姉さま」である。
-
フルンストゥラチとは、ミルク、砂糖、米粉、米粒からつくられるプディングで、オーブンで焼いた後に冷やす。
-
パヴィス総督府などから兵卒まで、ルナー帝国に関わる人々一般を指す俗称。エミーネの使う“ペローリア人”と同じで、用語の定義は曖昧。
-
日没時に捧げる祈り。アーナールダへの祈りは、古式には大地への接吻で行われるが、いまは更紗につつんだ白砂を広げ、これを手で掬って接吻する。
サーターの雅歌に、「そはまさにアーナールダの口づけ、黒糖の如し」という一節があるが、これはアーナールダのような美しい婦人とのキスが甘美なもの、と言っているだけではなく、アーナールダ信徒の口中が砂でじゃりじゃりしていることの暗喩である、と主張する説がある。(ダーラー、『雅歌に見る中世の庶民の暮らし』)
晩?に対応する、夜明けに捧げる祈り、早?もある。
-
葡萄を発酵させるために、大きなたらいに入れた葡萄を数人で踏む。
-
実際はきのこだけでなく、栗などの木の実、わらびなどの山菜もあれば採集する。
-
これも、屠殺だけでなく、腸詰め、燻製といった一連の作業を含む。燻製の際には魚も準備される。
-
寺院内で薬草や薬品を管理する部局。
-
脂肪と灰から作られる、今日で見られるのと同じ石鹸だが、この当時は高級品であった。例えば洗濯に石鹸が使われるということはなく、洗濯物は叩いて汚れを落とした。
-
当時のパヴィスでは、またとくに断りがないことからエスロリアでも、石鹸は椰子油から作られていたようである。
-
マルキオン教に伝わる『雅歌』の一節。
-
「シャフルナーズ」は新ペローリア語で「街に愛された」の意。この大女祭は過去にその美しさで公的に栄誉を浴したものらしい、が記録はない。
-
ゼイヤラン文化圏での一里は、男性が一日歩く距離の八分の一 (5km) に当たる。
-
1609年にエスロリアに侵入し、1618年にはノチェットを落とすことになる、グレイマネ率いるディタールス族のこと。
-
ランカー・マイの司祭の尊称。
- Appendix1 : The Earth Temple
- 大地の寺院
- 「
- 皆さんお早うございます、スィベルです。」
- 「
- お早うございます、ナノです。」
- 「
- エミーネがよそでここの話をするに当たって、寺院のレイアウトがどうなっているか分からないと、皆さんに齟齬があるのでは、と思いまして、僭越ながら解説させていただくことにいたしました。こちらの平信者、ナノが聞いて、わたしが答えるという形で進行していきたいと思います。」
- 「
- よろしくお願いします、スィベル姉さま。」
- 「
- はい。じゃ、まず寺院の門を入ってみましょうか?」
- 「
- ここを左に行くと、礼拝堂 (1) ですね。」
- 「
- そうです。信者さんがたくさん入っても大丈夫なように、縦長のつくりになってます。天井も高くて、広いですね。」
- 「
- お姉さま方は奥のドアからここに入ってきますね。」
- 「
- そう、奥のドアは寺院住まいの下級聖職者たちの大部屋 (2) になってます。ナノは入ったことある?」
- 「
- いいえ。」
- 「
- 中はねぇ、狭いのよぉ。5部屋分の大きさの大部屋2階で、50人くらいが寝てるの。プライバシーはカーテンだけ。しかも、入りたての頃ははしごで上がった2階なの。寝ぼけていると、危ないのよ。」
- 「
- 奥に別の扉がありますね?」
- 「
- こっちは食堂 (3) につながってるの。ナノもちょくちょく食事してるわね。食堂は、大部屋と調理場 (4)、そしてパティオ (5) につながってるわね。」
- 「
- パティオって、家庭菜園?」
- 「
- 違います。そりゃ、野菜も植わってるけど。ガーデニング、と言ってほしいわ。天気のいい日にござをしいてお茶を飲むための場所。」
- 「
- 正門の脇に大きな扉があって、いつもここから農具を出しますね。」
- 「
- そう、ここが物置 (6)。」
- 「
- 物置の横の、高そうな扉の部屋は?」
- 「
- 大女祭様の部屋 (7) よ。すごく広いから、この前、エミーネのために灰色卿と大ばばさまを招いたときも、ここでお話したのよね。」
- 「
- スィベル姉さまみたいな侍祭さまはどこで寝てるんですか?」
- 「
- 個室 (8) よ。2階と合わせて10部屋あるの。エミーネとフィリシアさんが泊まってたのもここね。客人もここに泊めるわ。広いのに加えて、北向きなの。パヴィスでは、北向きの部屋のほうが上質なのよ。」
- 「
- 正門の右横にある小さな部屋は、門番小屋 (9) ですね。」
- 「
- そう。中にははしごがあって、交代の人が上の休息所 (10) で寝るの。」
- 「
- 正門の上にある部屋はなんですか?」
- 「
- あれはね、バリスタ設置所 (11) って言われてるわ。でも、入ったことないし、バリスタも見たことないけど。」
- 「
- 3階には何があるんですか?」
- 「
- 3階なんてないわよ。」
- 「
- え? 外から見ると、3階建てに見えますよ。」
- 「
- あれは、ファザード。張りぼてね。」
- 「
- じゃ、これで全部?」
- 「
- そう、これで全部。」
- 「
- 狭くないですか?」
- 「
- 新パヴィスは土地が狭いのよ。」
- 「
- 寺院住み込み、考え直そうかな…。」
- Appendix2 : Casts
- キャスト
エミーネ・ハナルダ:エスロリア出身の看護婦。“癒し手”アーナールダの信者。人間の女性、22歳。
Emine Hann'ernalda: a Nurse from Esrolia; an Initiate of Ernalda, the Healer; Human Female, 22.
|
STR |
6 |
CON |
18 |
SIZ |
8 |
INT |
15 |
POW |
11 |
DEX |
16 |
APP |
15 |
|
Move |
3 |
HP |
13 |
FP |
24-15=9 |
MP |
11+6=17 |
DEX SR |
2 |
|
Insanity |
38 |
Depending on Al'yon |
22 |
|
R. Leg |
0 |
/ |
4 |
L. Leg |
0 |
/ |
4 |
Abdomen |
3 |
/ |
4 |
Chest |
3 |
/ |
5 |
R. Arm |
0 |
/ |
3 |
L. Arm |
0 |
/ |
3 |
Head |
4 |
/ |
4 |
|
運動 |
(+6) |
回避 55% |
操作 |
(+9) |
修理 10% |
交渉 |
(+9) |
オーランシー男性を睨みつける 55% 雄弁 10% |
知覚 |
(+9) |
聞き耳 30% 視力 30%[c] |
知識 |
(+5) |
応急手当 38% 植物知識 30% 製作,辛い料理 25% 病気の治療 20% 毒の治療 20% 動物知識 15% 製作,搾乳 15% 製作,剃毛 15% 人間知識 15% 鉱物知識 15% 世界知識 15% 鑑定 10% カルト知識 10% |
隠密 |
(+8) |
|
魔術 |
(+9) |
呪付 12% 召喚 12% 浄化 10% |
言語 |
|
Esrolian 35/15 Sartarite 18/- |
|
武器 |
SR |
A% |
/ |
D% |
ダメージ |
AP |
備考 |
剣杖 |
6 |
9 |
/ |
6 |
2D6+2 |
10 |
フィリシアから借りてる |
かま |
8 |
14 |
/ |
11 |
1D6 |
6 |
|
|
精霊魔術 |
(9-15=-6) |
発動率 |
49% |
治癒 II |
|
神性魔術 |
(9-15=-6) |
発動率 |
94% |
収穫祈願 x1 ヘビ支配 x1 傷の治癒 x1 |
|
防具: |
胴体および頭部にクイルブイリ、その上で頭部に薄い革 |
財産: |
2ペニー。医療鞄、麻と毛の衣服、ナイフ、かま、麻袋、発火具と火口、気の精霊を呪付した指輪 (POW 6) 、治癒焦点魔漿石 (POW 1)、フィリシアから借りた剣杖。 |
|