奢侈品
Luxury Goods
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf

 「奢侈品」とは、かさばらず、価値が高い、最悪でもある程度の富をもたらしうる商品の総称である。さまざまな商品がこの範疇に含まれうるが、ここでは私は精油・香水、宝石、[特殊な]木材、嗜好飲料、薬物、薬草、香料、奴隷について論じることにする。

 精油および香水は最上級のものでさえ原地で生産され、消費される。長距離交易に引き合うに十分な値をつけるものはほんの僅かである。以下に、ジェナーテラで用いられる高価な香水とその原産地のリストを掲載する。

香水   原産地
紅衣(蓮) クラロレラ
テシュノス
乳香 フォンリット
没薬 ウーマセラ
紫の薔薇 ラリオス
牡丹 ペローリア
ラベンダー フロネラ

 グローランサで唯一にして最も重要な宝石の供給源はマニリアにあるカラドラランドである。ジェムボーグのモスタリは商人にダイアモンド、ルビー、サファイアを売却し、商人がジェナーテラ中にこれらの宝石を売ってまわる。カラドラランドと影の高原は上質な縞瑪瑙の二大供給源である。コラリンソール湾とクラロレラ水道[Suam Chow か?]はどちらも真珠の産地として名高い。クラロレラは唯一の翡翠の供給地でもある。エメラルドは東方諸島から輸入されるているが、非常に高値がつけられる。他の高価なものでは象牙があるが、これは白海のセイウチの牙と、テシュノスの象牙が主な供給源となっている。

 ジェナーテラで広く交易されている木材には2種類あって、一つは染木と総称されるものである。この名が示すように、こうした木材は高価な染料の原料となる。ウェネリア海岸、テシュノスのフェスロン、東方諸島の島々ではさまざまな染木を見出すことが出来る。もう一つの高価な木材は白檀であり、これはテシュノスで生育する。白檀は中央ジェナーテラで装飾箱や高価な工芸品(玉座など)をつくるのに用いられる。

 高品質の嗜好飲料のみが長距離交易される。ペローリア、エスロリア、サーターはいずれも特有のウィスキーの産地として名高い(1)。これらのウィスキーの最上品が互いに交易され、あるいはプラックスや西方へ輸出されている。ダラ・ハッパ地域はさまざまな高品質のワインとブランデーで名高く(2)、これらの産品は西方や南方に市場を持っている。テシュノスおよびクラロレラではそれぞれ特有のお茶を生産しており、これらは西方や中央ジェナーテラで高値がつけられる。カラドラランドではコーヒーが栽培され、ジェナーテラのほとんど全域に供給している。ジルステラでのみ栽培されるコーヒーはブルー・マウンテンと呼ばれており(3)、最近になって主要な貿易港においてちらほら出始めた。

 薬物もまた十分な利益をもたらすものはほんの一部である。プラックスからペローリアへのハジア密輸は両地域の太陽神殿の摘発にもかかわらず止むことがない。アヘンはテシュノスで栽培され用いられているが、公には禁止されているにもかかわらずクラロレラにも輸出され、絹や黄金と交換されている。他のジェナーテラの諸交易都市においてもアヘンの取扱高の増加が見られる。忘却王国の天京府 [Bliss] 太守たるサン・シュー [Can Shu] は「黒蓮丹 [Black Lotus Dust] 」の輸出を奨励している。「黒蓮丹」のほとんどはクラロレラ本土、テシュノス、ヴォルメイン、東方諸島に流出しているが、一部はジェナーテラの他の地域に販路を持っている。少量だが、薬物はペントの遊牧民の手を経てつねにペローリアへ流出しつづけている。

 いくつかの薬草は長距離を超えて交易される。エスロリアのベラドンナとドクニンジンはルナーの「ダート競技会」でさまざまな役割を果たす。テシュノスおよびクラロレラのアロエは主要な交易都市に販路を持っているが、事業家がゾーラ・フェル河谷でアロエの移植を試みて以来、供給過剰気味である。ウェネリアのカモミールはケタエラおよびドラゴン・パスのあちこちで熱さましとして用いられている。カンタリデスはダゴーリ・インカースの巨大カブト虫からつくられ(4)、オスリル河谷の諸都市に輸出されて、治療薬や催淫剤として用いられる。

 香料は地球において長い間にわたって国際交易の主要産品でありつづけたが、これはグローランサでも変わらない。東方諸島からの丁子(ちょうじ/グローブ)、肉桂(にっけい/シナモン)、肉豆蔲(にくずく/ナツメグ)は中央ジェナーテラにおいて一般に需要が増大している。クラロレラの黒胡椒は主要な輸出品であり、カラドラランドの粉トウガラシ [red pepper] も同様である。中央ジェナーテラおよび西方では精糖の人気が急速に高まっている。砂糖黍はテシュノスで栽培されていたが、今ではゾーラ・フェル河下流域においてもルナーの事業家によって移植されており、急速に市場を獲得しうる換金作物として注目されている。


  1.   蒸留酒の製造にはある程度の化学技術が必要に思われるが、その歴史は意外に古く、イングランドのへンリー2世がアイルランドに進攻したとき(1172年)、すでにこの地では、大麦から蒸溜した酒を飲んでいたと記述されている(アイルランドの伝説では、4世紀の聖パトリックが蒸留技術を伝えたことになっている!)。
     したがって、サーターのような辺境で蒸留酒が製造されていても不思議はないのである。

  2.   ダラ・ハッパにおけるワインの生産地がダージーンおよびシリーラであることは後述される(4-4 ペローリア)。これらの地方の中ででも、葡萄は丘陵地で栽培されることから西部のヨルプ山脈に連なる丘陵地帯で、出荷が容易な河川に面した地域(Oarz や Voranel)がワインの里になっているのだろう。

  3.   地球の「ブルー・マウンテン」の名は、この豆の産地であるジャマイカ島を東西に走る山脈の最高峰、ブルーマウンテンから採られている。おそらく、ジルステラの山脈にも屹立した高山ながら積雪がない、「青い山」があるのだろう。

  4.   カンタリデス [cantharis] とは、甲虫 Spanish Fly を粉末にした媚薬のこと。